金融市場NOW
日本の資金循環統計にみる個人金融資産の動向について
2013年08月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ポイント
- 2012年度の部門別資金過不足を経済主体別で見ると、家計部門と民間非金融法人企業部門は資金余剰、一般政府部門と海外部門は資金不足となっています。
- 2013年3月末の家計部門の金融資産残高は、前年比+54兆円(+3.6%)の1,571兆円となりました。アベノミクスが奏功し、株価が上昇、為替が円安となったことが要因と思われます。
- 民間非金融法人企業の現金・預金は増加しましたが、設備投資には未だ力強さが欠けています。今後、この現金・預金の増加の効果が実体経済に波及するには、民間企業の余剰資金が設備投資に充てられるかどうかがポイントになると考えられます。
部門別資金過不足
日本銀行の「資金循環統計」における経済主体別の資金の流れから日本経済の動きを捉えることができます。
経済主体別で見ると、家計部門と民間非金融法人企業部門では資金余剰となっています。家計部門(+22.1兆円) と民間非金融法人企業部門(+25.8兆円)が一般政府部門の大幅な赤字(-40兆円)を埋める構造です(グラフ1)。2013年3月末の家計部門の金融資産残高は、前年比+54兆円(+3.6%)の1,571兆円となりました(グラフ2)。
グラフ1:部門別資金過不足(1990年度~2012年度)

グラフ2:家計の金融資産(残高)の推移 (2012年第1Q~2013年第1Q)

家計の金融資産と民間企業の設備投資
2013年第1四半期の家計の金融資産は、現金・預金が前年比-6%、株式・出資金が+20%、投資信託は+10%となり、リスク資産にシフトした形になっています。アベノミクスが奏功し、株価が上昇、為替が円安となったことが要因と思われます(グラフ3)。
一方、民間非金融法人企業の現金・預金は増加しましたが、設備投資には未だ力強さが欠けています。実体経済に波及するかどうか(いわゆる"資産効果")は、民間企業の余剰資金がどの程度まで設備投資に充てられるかがポイントになると考えられます(グラフ4)。
グラフ3:家計の金融資産(前年比)の推移(2012年第1Q~2013年第1Q)

グラフ4:民間非金融法人企業の現金・預金、貸出、設備投資の推移(2012年第1Q~2013年第1Q)

金融市場動向
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