金融市場NOW
直近のIMFの世界経済見通しとフォワードガイダンスについて
2013年07月22日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ポイント
- 国際通貨基金(IMF)は、7月9日に改訂された世界経済見通しの中で、世界経済の成長率(実質GDP成長率) 見通しを2013年は+3.1%、2014年は+3.8%と前回(4月)の発表から0.2%下方修正しました。先進国については、2013年は+1.2%、2014年は+2.1%と前回から0.2%下方修正、また新興国も2013年は+5.0%、2014年は+5.4%と前回から0.3%下方修正しました。
- 7月4日に行われたイングランド銀行(BOE:英国中央銀行)の金融政策会合で、「フォワードガイダンス」(注)が 取り上げられ、同日の欧州中央銀行(ECB)の政策理事会では、「フォワードガイダンス」を導入することが決定 しました。
- IMFは、世界経済の成長率見通しの下方修正について、欧州の長引く景気後退、米国経済の財政緊縮の影 響、一部新興国の成長ペース減速の見通し等によるものとしています。また、IMFは、金融当局と金融市場の 明確なコミュニケーションが、金融市場の急激な変動を抑えることに役立つとしています。BOEやECBは、「フォワードガイダンス」の導入で金融市場と密接にコミュニケーションをとり、世界経済の持続的成長を金融面から支えていく方針だと思われます。
- 「フォワードガイダンス」とは
時間軸政策のことで、「現状の金融政策をいつまで続けるか」について、金融政策当局が事前に表明すること
IMFの世界経済見通し(7月9日改訂)
7月9日に改訂されたIMFの世界経済見通しについては、表1のとおりです。
表1:IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)(7月9日改訂)
(単位:%)
2013年予想 | 2014年予想 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2011年 | 2012年 | 4月予想時との比較 | 4月予想時との比較 | ||||
世界 | 3.9% | 3.1% | 3.1% | -0.2% | 3.8% | -0.2% | |
先進国 | 1.7% | 1.2% | 1.2% | -0.1% | 2.1% | -0.2% | |
米国 | 1.8% | 2.2% | 1.7% | -0.2% | 2.7% | -0.2% | |
ユーロ圏 | 1.5% | -0.6% | -0.6% | -0.2% | 0.9% | -0.1% | |
ドイツ | 3.1% | 0.9% | 0.3% | -0.3% | 1.3% | -0.1% | |
フランス | 2.0% | 0.0% | -0.2% | -0.1% | 0.8% | 0.0% | |
日本 | -0.6% | 1.9% | 2.0% | 0.5% | 1.2% | -0.3% | |
英国 | 1.0% | 0.3% | 0.9% | 0.3% | 1.5% | 0.0% | |
新興国 | 6.2% | 4.9% | 5.0% | -0.3% | 5.4% | -0.3% | |
アジア | 7.8% | 6.5% | 6.9% | -0.3% | 7.0% | -0.3% | |
中国 | 9.3% | 7.8% | 7.8% | -0.3% | 7.7% | -0.6% | |
インド | 6.3% | 3.2% | 5.6% | -0.2% | 6.3% | -0.1% | |
中南米他 | 4.6% | 3.0% | 3.0% | -0.4% | 3.4% | -0.5% | |
ブラジル | 2.7% | 0.9% | 2.5% | -0.5% | 3.2% | -0.8% | |
メキシコ | 3.9% | 3.9% | 2.9% | -0.5% | 3.2% | -0.2% |
2013年の世界経済の成長率見通しは+3.1%(0.2% 下方修正)、これは、2012年の+3.1%と同ペースの緩やかな成長見通しです。2014年の見通しは+3.8%(0.2% 下方修正)としています。
先進国の2013年の成長率見通しは+1.2%(0.1%下方 修正)、2014年の見通しは+2.1%(0.2%下方修正)、ま た新興国の2013年の成長率見通しは+5.0%(0.3%下方 修正)、2014年の見通しは+5.4%(0.3%下方修正)とし ています。
下方修正の理由として、欧州の長引く景気後退、米国経済の財政緊縮の影響、一部新興国の成長ペース減速の見通し等をあげています。
BOE及びECBによるフォワードガイダンスの導入
グラフ1:主要先進国の政策金利の推移

BOEは、7月4日に行われた金融政策会合において、「政策金利は0.5%、量的緩和のための資産買い取り枠は3,750億ポンドを維持する」ことを決定するとともに、8月に明示的な「フォワードガイダンス」を導入することを示唆しました。
また、ECBは、政策理事会で「フォワードガイダンス」を導入することを決定しました。
ECBは、声明文に「政策理事会は、政策金利は長期にわたり(an extended period of time)、現在の水準か、それよりも低い水準に留まると予測している」との記述を新たに挿入しました。「フォワードガイダンス」を導入した目的は、ある程度長期にわたり緩和政策を維持しながら景気や金融問題に取り組むという姿勢を明確にすることで、金融市場が金融政策の意図を汲み取りやすくするため と考えられます。つまり、金融市場と密接にコミュニケーションをとることで、金融政策の効果を高める狙いがあると思われます。
金融市場動向
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