金融市場NOW
米国の量的緩和第3弾(QE3)縮小と米国経済について
2013年07月11日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ポイント
- バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は5月22日の議会証言と、6月19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後の記者会見で、「QE3縮小」の時期について言及しました。
- 「100年に一度」と言われたリーマンショック以後の金融危機において、FRBが採用した超低金利政策と3回の量的緩和(QE)政策は効果的な対応であったと言えます。米国景気の持続的回復は既に5年目となり、失業率もピークの10%から今年6月には7.6%まで改善しています。
- 7月10日には、前回(6月18、19日開催)のFOMC の議事録が公開され、また、同日バーナンキ議長の講演がありました。議事録では、「多くのメンバーは、QE3縮小は労働市場の見通しが一段と改善する必要がある」とし、バーナンキ議長は、「緩和的な金融政策が米国経済には必要だ」と述べています。
米FRBのバランスシート
グラフ1:米FRBの総資産及び保有資産の推移

米FRBのバランスシートを見ると、総資産は3兆4千億ドル、内米国国債1兆9千億ドル、MBS(モーゲージ証券)1兆2千億ドルとなっています(2013年6月26日時点)。
FRBがここから更にバランスシートを拡大することは出口戦略をより困難なものにする懸念があります。FRBもこうした状況を十分に認識しており、バーナンキ議長が今般、量的緩和縮小の時期について示唆したことは適切な対応と考えられます。
QEと米国株式
グラフ2:米マネタリーベースとNYダウの推移

QEは過去3回行われました。
QE1は、2008年11月~2010年6月、QE2は、2010年11月~2011年6月、QE3は、2012年9月~(現在進行中)で、月額850億ドル(国債450億ドル、MBS400億ドル)の買い入れとなっています。 QE1とQE2の終了前後では、米国株式はQE終了を織り込む形で調整していますが、調整が終わると、その後は持続的な景気回復を伴う形で、堅調に上昇しています。
QEと米国金利
グラフ3:米マネタリーベースと米国金利の推移

超低金利政策は、FFレートが2008年12月に0.25%に引き下げられて以降、約4年半続いています。その間、QEは3回行われました。今後FRBの金融政策は、QE3縮小→QE3停止→超低金利政策解除と、雇用等の経済状況を見ながら、慎重に実行されていくと考えられます。
米国経済は、これまでのような量的緩和への過剰な依存による成長ではなく、通常の成長軌道に回帰できるものと見ています。
- グラフ1~3のデータ期間はいずれも(2008年1月~2013年6月、1は週次、2と3は月次)
金融市場動向
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