金融市場NOW
米国の歳出削減期限と市場への影響について
2013年02月27日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
米国では「強制歳出削減」の発動が今週末の3月1日に迫っています。これを回避するには議会の立法措置が必要ですが、先週末の時点では与野党に歩み寄りの気配は見られず、「歳出削減」が一旦開始される可能性も高まりつつあります。
グラフ1:財政赤字の見通し

「強 制歳出削減」は、2011年8月の債務上限引上げの際に合意された財政改善策の1つで、2013年から9年間、毎年1100億ドルの歳出を強制削減する内容となっています。1100億ドルはGDPの0.7%に相当し景気への影響も大きいものとなっています。財政赤字の対GDP比率は、「強制削減」回避の場合は前年の7.0%から5.8%へと▲1.2%の縮小にとどまりますが、削減実施の場合は5.3%へと▲1.7%もの縮小となり(グラフ1)、赤字削減による景気への悪影響が拡大しそうです。
強制歳出削減条項の概要
- 2013~2021年の9年間、毎年1100億ドルの歳出を強制的に削減
(但し2013年は860億ドル) - 削減は「国防費」「非国防費」から均等に実施
(非国防費のうち20%程度は高齢者医療給付である「メディケア」から削減) - 「2011年予算管理法」に基づく措置
- 実施は2013年3月1日より
(当初1月開始予定も議会決議で2ヶ月間延期中)
グラフ2:実質GDP前年比

米国の実質GDP成長率は潜在成長率と言われる2%前後での動きにとどまっており、景気の実勢は決して強くありません(グラフ2)。「強制歳出削減」が発動され、政府支出のマイナス寄与が現状以上に拡大してくる場合には、成長率が2%を下回る状況が続くと予想され、景気への警戒感が急速に台頭してくる可能性もありそうです。
グラフ3:財政問題の期限と株価

財政問題をめぐる議会での交渉が注目された、2011年7月の「債務上限問題」、2011年11月の「歳出削減交渉」、昨年末の「財政の崖」のケースをみると、いずれも、交渉期限直前の株式市場は一旦下落傾向となっています(グラフ3)。今回も期限前の早期決着が図られない場合には、株価は一旦弱含む可能性がありそうです。また、議会の対応次第では、その後の株価が大きく動く展開も考えられます。
金融市場動向
関連記事
- 2025年02月20日号
- 機械学習の手法を活用しシクリカル株に投資(前編)
- 2025年01月23日号
- 成長性を評価する定量指標(1)
- 2025年01月17日号
- 【アナリストの眼】データが導くヘルスケアのイノベーション
- 2024年12月13日号
- 【アナリストの眼】食品企業の挑戦:インフレ継続をチャンスに変えられるか
- 2024年11月18日号
- 【アナリストの眼】KDDIがローソンと挑む「ソーシャル・インパクト」は、株主の期待に応えられるか?
「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点
当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。
【当資料に関する留意点】
- 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
- 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
- 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
- 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
- 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。