金融市場NOW
米大統領・議会選挙と財政の崖について
2012年10月15日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
11月6日の米大統領・議会選挙まで、あと1カ月を切りました。大統領選では、民主党の現職であるオバマ大統領が優勢に戦いを進めてきましたが、10月3日に実施されたテレビ討論会※1で、共和党候補のロムニー氏が巻き返し、その後の世論調査では支持率が急上昇、大接戦となっています(グラフ1)。また、議会選挙では下院は共和党優勢となっていますが、上院は接戦となっています(グラフ2)。
- 第一回目の討論会、今後は第二回目が10/16、第三回目が10/22にそれぞれ予定されている(日程はいずれも現地時間)
今回の選挙では「財政の崖」問題が注目されています。「財政の崖」とは、(1)ブッシュ政権時代からの所得税減税などが年末で失効する、(2)来年から強制的な歳出削減が行われる予定というもので、総額5600億ドル、対GDP比で4%もの財政緊縮となります。米議会予算局は、「崖」が実現した場合、2013年の米経済は0.5%のマイナス成長になり、現在7.8%の失業率は9.1%まで上昇すると試算しています。
グラフ1:大統領支持率推移(10/11現在)

グラフ2:上院と下院の議席数予想(10/11現在)

この「財政の崖」への対応や財政政策の相違点を、選挙結果の場合分けで見てみたいと思います。議会選挙については、下院は共和党が制する可能性が高いと考えられるため、その前提で大統領と上院の選挙結果を場合分けして考えます(表1)。
表1:選挙結果の場合分け
上下院の多数派政党 | 大統領 | 政治の安定性 | 予想される財政の崖への対応 | 財政の崖への対応 | 財政政策の景気への影響 | コメント | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ケース1 | 共和党 | ロムニー | 政策運営がスムーズ | 年内決着の可能性も | ○ | × | 財政の崖への対応はスムーズだが、緊縮的な財政政策で景気にはダメージ |
ケース2 | オバマ | オバマの中道路線化 | 年内決着は困難 | △ | △ | 財政の崖への対等はオバマの妥協により実現と予想 | |
ケース3 | ねじれ | ロムニー | 政党間の対立継続 | 年内決着は困難 | × | × | ねじれ議会により財政の崖への対応、財政政策全般までまとまりを欠く |
オバマ |
- ケース1 大統領、上院多数派が共に共和党の場合
-
ブッシュ減税の継続や債務上限引き上げ等の「崖」問題への対応はケース1~3で最も円滑であると想定され、景気や市場へのインパクトは最も小さいと考えられます。ただし、基本的に共和党の方が緊縮的な財政政策であるため、長期的には景気に対してマイナスに働くとみられます。
- ケース2 大統領が民主党、上院多数派が共和党になった場合
-
「崖」への対応は民主党のオバマ大統領の妥協により実現すると予想されます。財政政策は共和党よりとなるものの、景気回復への妨げとなるものは、オバマ大統領が拒否権を発動すると見ています。
- ケース3 大統領がどちらの党であっても、上院多数派が民主党になり上下院がねじれ状態の場合
-
「崖」問題の年内決着は困難となります。減税措置等は暫定的に延長するなどの措置がとられる可能性はありますが、「崖」問題は上下院の駆け引き材料となり、その動向に左右されて、市場は年末から年初にかけて上下に動きやすくなると予想されます。
金融市場動向
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