金融市場NOW
欧州中央銀行による無制限の国債購入決定と為替市場への影響について
2012年09月10日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
欧州中央銀行(ECB)は9月6日、定例の理事会でスペインなど南欧諸国の信用不安を払拭するための新しい国債購入プログラム(OMT: Outright Monetary Transactions)の導入を決定しました。今年8月にはECBドラギ総裁が新たな国債購入プログラム導入を表明していたため、今回はその内容に注目が集まりました。
グラフ1

新たなプログラムの内容は償還期限が1~3年の国債をECBが購入するものですが、発表された概要のなかで、(1)購入総額は「目的を達成する十分なサイズ」とされ、実質無制限となっていたこと、(2)ECBの買い入れた債券の優先弁済権(注)は放棄となっていたこと、などが市場で好感され、スペイン10年国債の利回りは6.41%から6.03%に、イタリア10年国債は5.51%から5.26%にそれぞれ低下(グラフ1)、NYダウは前日比244ドル上昇して13,292ドルと約4年8カ月ぶりの高値になりました。
- 従来はECB買い入れ債券に優先権があり、ギリシャの債務再編時には、ECBには優先的に返済される一方、一般投資家は大きな損失をこうむりました。
ただし、今回のプログラム実行には、対象国が今後設立される欧州安定メカニズム(ESM)などに支援を要請することを買い入れの条件としていることなどもあり、今後も紆余曲折が予想されます(注)。
- ESMに関しては、9月12日にドイツの憲法裁判所で合憲か違憲かの判決が出る予定であり、市場の注目を集めています。
グラフ2

為替市場では、欧州債務問題がスペインやイタリアまで拡大してきたことからユーロが売られる展開が続いていました。しかし、新しいプログラム導入の観測から、7月下旬をボトムとしてユーロは反発に転じました(グラフ2)。今後も、欧州債務問題は継続すると考えられ、ECBやユーロ圏各国が打ち出す政策や発言によって相場が振れる展開が予想されますが、市場にはある程度織り込み済みであると考えられることから、当面ユーロ/円は横ばい圏で推移すると見ています。
金融市場動向
関連記事
- 2025年02月20日号
- 機械学習の手法を活用しシクリカル株に投資(前編)
- 2025年01月23日号
- 成長性を評価する定量指標(1)
- 2025年01月17日号
- 【アナリストの眼】データが導くヘルスケアのイノベーション
- 2024年12月13日号
- 【アナリストの眼】食品企業の挑戦:インフレ継続をチャンスに変えられるか
- 2024年11月18日号
- 【アナリストの眼】KDDIがローソンと挑む「ソーシャル・インパクト」は、株主の期待に応えられるか?
「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点
当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。
【当資料に関する留意点】
- 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
- 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
- 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
- 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
- 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。