金融市場NOW

日本の7月貿易統計と国内景気及び為替について

2012年08月28日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

グラフ1:輸出入 季節調整値

出所:財務省、日銀、経済産業省のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

8月22日に発表された7月貿易収支は5,174億円の赤字となりました。季節調整値では3,257億円の赤字で、震災直後の昨年3月から17ヵ月連続で輸入が輸出を上回る「貿易赤字」の状況が続いています(グラフ1)。これまでは、鉱物性燃料を中心とした輸入の急増が赤字の主因でしたが、ここ2-3ヵ月は輸入増が一服する一方、輸出が再び減少に転じている点は、景気の先行きを考える上で要注意といえそうです。

グラフ2:鉱物性燃料 輸入額・価格 前年比

出所:財務省、日銀、経済産業省のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

輸入については、輸入全体の約1/3を占める原油・LNGなど「鉱物性燃料」の輸入額が、価格の低下で前年とほぼ同水準まで鈍化しています(グラフ2)。一方、原発停止に伴う数量増で、「金額」の伸びが「価格」の伸びを上回る状況も続きそうです。今後の原油価格にもよりますが、「輸入」は現状程度での高止まりが続く可能性も高そうです。

グラフ3:地域別輸出額増減 前年比(7月)

出所:財務省、日銀、経済産業省のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

輸出については、7月地域別輸出額の前年比増減をみると、北米向けが自動車の回復でプラスを保つ一方、欧州・アジア向けが大幅減となっています(グラフ3)。昨年の輸出減は震災・タイ洪水など一時的要因の影響が大きかったのですが、今回の輸出減は欧州・新興国の景気悪化を反映しており、回復にはやや時間がかかると見られます。

グラフ4:輸出・鉱工業生産の前年比

出所:財務省、日銀、経済産業省のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

国内景気への影響については、当面の輸出減が国内生産の鈍化に直結しやすいと考えられます。7月の鉱工業生産は予測では+4.6%と回復が見込まれていますが、7月輸出の低迷をうけて回復ペースが鈍ってくる可能性もありそうです(図表4)。一方、貿易赤字の定着は為替相場における円高圧力を緩和させることで、中期的に景気にプラスの影響を与えると期待されます。

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