金融市場NOW
中国の7月貿易統計と金融緩和の動き
2012年08月15日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
グラフ1:中国の輸出入の動き(前年比伸び率)

8月10日に発表された7月の中国貿易統計では「輸出」が前年比+1.0%増と2009年以来の水準へ鈍化、「輸入」も前年比+4.7%増へと鈍化となりました(グラフ1)。世界最大の輸出国である中国の輸出鈍化をうけて、市場では世界景気への警戒が強まり、日・欧の株価は下落、米国も小幅の上昇にとどまりました。
国別の動きをみると、世界景気を反映する「輸出」では対EUが前年比-16%と大きく減少するとともに、対米国も前月の +11%から+1%へと大幅に減少、外需の低調が一段と鮮明になりつつあります。また「輸入」でも、全体としては若干鈍化 している(表1)ことから、中国の景気は、「外需」「内需」ともに、現時点ではまだ減速基調が継続中といえそうです。
表1:中国輸出入の相手先別前年比
(億ドル)
(年/月) | 輸出 | 輸入 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
12/7 | 12/6 | 12/7 | 12/6 | |||
前年比 | 実額 | 前年比 | 前年比 | 実額 | 前年比 | |
EU | -16% | 294 | -1% | 5% | 186 | -2% |
米国 | 1% | 301 | 11% | 12% | 102 | 16% |
日本 | -1% | 127 | 0% | 0% | 162 | -5% |
韓国 | 0% | 69 | 7% | 2% | 137 | -2% |
台湾 | -5% | 30 | 8% | 10% | 114 | 1% |
その他共合計 | 1.0% | 1769 | 11.3% | 4.7% | 1518 | 6.3% |
グラフ2:中国の政策金利と消費者物価

一方、景気減速とインフレ沈静化をうけて、追加金融緩和や景気対策の可能性も高まりつつあります。8月9日に発表さ れた7月消費者物価上昇率は前年比+1.8%と6月の+2.2%から一段と鈍化(グラフ2)、1年預金金利の3.0%を大きく下回る 水準にあり、追加利下げの余地は十分にありそうです。
グラフ3:中国のインフレとGDP成長率

中国のインフレとGDP成長率の関係をみると、「インフレのピークから概ね2四半期から3四半期後にGDP成長率がボト ムをつける」傾向がみられます(グラフ3)。インフレのピークは昨年7-9月であり、3四半期後の今年4-6月をボトムに、景気 が徐々に回復に向かう可能性も十分にありそうですが、金融緩和や景気対策の規模やスピードがその鍵を握ると考えら れます。中国経済が世界の景気や株価に与える影響は大きいことから、今後の動きが注目されます。
金融市場動向
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