金融市場NOW
ユーロ圏首脳会議と市場への影響
2012年07月05日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
グラフ1:スペイン金利と為替・株式市場 (2012/6/1~6/29、日次)

6月28-29日のEU首脳会議の合間に開催されたユーロ圏首脳会議では、「銀行への直接資本注入」などの危機対応策が基本合意されました。これをうけた29日の欧州国債市場では、スペインなど債務国の国債利回りが急低下、ユーロは急反発、世界の株式も急上昇となりました(グラフ1)。
今回の合意は、(1)域内銀行監督の一元化、(2)銀行への直接資本注入、(3)スペイン支援での優先弁済権放棄、(4)支援基金の市場安定化への活用の4点が骨子となっています。
ユーロ圏首脳会議の合意内容
- 域内の銀行監督を一元化(年末までに具体化)
- 上記実現後は欧州安定メカニズム(ESM)による銀行への直接資本注入を可能に
- スペイン支援は欧州金融安定基金(EFSF)で実施後、優先権を持たない形で欧州安定メカニズム(ESM)へ継承
- 市場安定化へ、EFSF/ESMを柔軟に活用
出所:European Council 、ECB、Bloomberg
とくに政府を通さず直接銀行に資本注入できる仕組みの導入((2))は政府債務の増大を抑制する点で画期的といえそうです。欧州安定メカニズム(ESM)による当面のスペイン支援で優先弁済権を放棄する点((3))も他の債権者の不安を和らげる効果がありそうです。一方、「政府」のような課税権や政策決定権を持たない「銀行」への資本注入では、支援側のリスクも高まります。銀行監督一元化や直接資本注入に関する具体策についてはドイツと他の主要国の対立も予想され、実現にはなお紆余曲折がありそうです。
グラフ2:EU首脳会議とS&P500(2010/4/1~2012/6/29、日次)

EU首脳会議で大きな危機対策が打ち出された後の株価をみると、直後に欧州中銀(ECB)による「長期資金供給オペ」が実施された昨年12月を除き、株価が低迷しているケースが意外に多くなっています(グラフ2)。今回も、首脳会議でのアナウンスメント効果に続く実効的な市場対策の実施が重要といえそうです。
グラフ3:欧州中銀の総資産と国債買入(2010/1月第1週~2012/6月第3週、週次)

この意味では、7月5日の欧州中銀(ECB)理事会での金融政策が注目されます。「長期資金供給オペ」は前回実施から4ヵ月が経過、「国債買入」も3月以降中断された形となっています(グラフ3)。こうした強力な市場対策が再開される場合には、債務問題への懸念が当面遠のくことで、株価の上昇継続も期待できそうです。
金融市場動向
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