金融市場NOW

スペインの金融支援要請について

2012年06月11日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

グラフ1:支援要請前の10年国債利回り対独スプレッドの動き

出所:Eurostat, EU, IMF,各種報道, ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

先週末(6/9)のユーロ圏財務相電話会議で、スペインはユーロ圏諸国に対し最大1000億ユーロの金融支援要請に踏み切りました。現在支援下にあるギリシャ・アイルランド・ポルトガルは10年国債利回りのドイツ国債への上乗せ幅が5%を超えた段階で調達コストの増大から支援要請を余儀なくされてきましたが(グラフ1)、スペインも5/28日に対独スプレッドが5%を突破し、市場では思惑が高まりつつありました。

図1:スペイン支援策(案)の概要

出所:Eurostat, EU, IMF,各種報道, ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

スペインの銀行は不動産バブルの後遺症に苦しみ、国際通貨基金(IMF)の試算では370億ユーロの資本不足が懸念されています。今回の支援はこうした銀行の救済目的に限定したもので、ギリシャ等で実施された全面支援とは異なり、スペイン政府には新たな財政緊縮策は求められません(図1)。市場に一定の安心感を与える効果は期待できそうです。

グラフ2:財政赤字(対GDP比率)

出所:Eurostat, EU, IMF,各種報道, ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

一方、スペインは銀行救済以外の資金については市場での調達が今後も必要とされますが、スペインの財政赤字はGDP比で8.5%とギリシャ並みに高く(グラフ2)、GDPもマイナス成長(2012年:-1.7%)が見込まれる中、財政赤字の改善は容易ではなさそうです。国債市場の動きを通して、スペインへの懸念が再度高まる可能性には十分に注意する必要があります。

グラフ3:支援要請前後のS&P500の動き

出所:Eurostat, EU, IMF,各種報道, ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

株価への影響については、過去に3か国が支援を要請した後のS&P500の動きをみると、ギリシャやポルトガルのケースでは株価は下落基調となっており、支援申請が必ずしも株高材料とはいえないようです(グラフ3)。今回も、週末(6/17)にはギリシャの再選挙も控えており、欧州債務問題への懸念が続きやすい状況であり、今後の動きには要注目です。

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