金融市場NOW

日本の貿易収支と為替レートへの影響について

2012年04月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

グラフ1:貿易収支の動き

出所:財務省、日銀のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

3月22日に発表された2月の貿易収支は329億円の黒字と1月の1兆4,769億円の赤字から大幅に改善、5ヵ月ぶりの貿易黒字となりました(グラフ1)。
貿易収支は単月の振れが大きく、トレンドを判断するには前年との対比が重要です。貿易収支は昨年3月の震災以降、前年を大幅に下回る動きが続いており、今回の貿易黒字も前年比では約6,000億円もの悪化となっています。2月の貿易収支は一旦黒字となったものの、全体としては貿易赤字の構造に変化はないと思われます。

貿易収支悪化幅の内訳をみると、原油高と原発停止に伴う、石油・天然ガスなど「鉱物性燃料」の収支悪化が大半を占めています(グラフ2)。「鉱物性燃料」の「輸入物価」の上昇は昨年夏をピークに鈍化傾向にありますが、ここ2-3ヵ月は価格上昇率が鈍る中でも輸入額の高止まりが続いており(グラフ3)、原発停止にともなう需要増の影響が出ている模様です。原油価格や原発再稼働の状況にもよりますが、貿易赤字の構造は当面続く可能性がありそうです

グラフ2:2012年2月 貿易収支前年差の内訳

出所:財務省、日銀のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ3:鉱物性燃料 輸入額・物価前年比

出所:財務省、日銀のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ4:経常収支とドル/円レート

出所:財務省、日銀のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

為替相場への影響はどうでしょう。85年以降で経常収支が悪化した4回の局面をみると、08年のリーマンショック時を除く3回はいずれもドル/円相場が対前年で円安へ動いています(グラフ4)。リーマンショックのケースは世界同時の需要後退による経常収支悪化であり、かつ市場のリスク回避姿勢も強まったことで逆に円高となりました。一方、今回の経常収支悪化は震災など日本独自の要因が大きく、その面からは、他の3回と同様に円安圧力となる可能性が高いと考えられます。円安傾向の定着は、市場の景況感を支え、株価にも好影響を与えると期待されます。

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