金融市場NOW
米国消費の動向
2012年03月05日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 例年、ガソリン価格は春先から上昇する季節性があります。今年は中東情勢の緊迫化もあり更なるガソリン価格上昇の可能性があります。
- ガソリン価格の上昇は、時間差を置いて消費者マインドの重石となり、消費の圧迫要因となる可能性があります。
- 住宅価格の下押し圧力が今後かかることが見込まれ、逆資産効果から米国消費の重石になると考えられます。
グラフ1:各年の米国ガソリン価格の推移

バーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長は、2月29日の米下院金融サービス委員会で証言をし、足元の原油高について「一時的に物価上昇率を高め、消費者の購買力を減退させる可能性がある。」との懸念を表明しました。
ガソリン価格には季節性があり、ドライブシーズンを控えて年初から春先程度まで上昇する傾向があります。今年はイラン情勢の緊迫化もあり、昨年や2008年のペースを上回る急激なガソリン価格上昇が観測されています(グラフ1)。
グラフ2:ガソリン価格と消費者信頼感指数

米国では雇用が改善傾向にあり、消費者マインドも大きく改善しています。しかし、ガソリン価格の上昇がこのまま続いた場合、バーナンキFRB議長が指摘した通り消費者マインドの重石になる可能性があります。アメリカは車社会であるため、ガソリン消費を削ることはなかなか困難です。このため、ガソリン価格の上昇は家計の購買力低下につながるというわけです。
グラフ2は、ガソリン価格と消費者信頼感指数ですが、ガソリン価格が一定価格以上に上昇すると、時間差を伴い、消費者信頼感が低下する傾向が見てとれます。消費者信頼感の低下は、米国国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費の停滞を招くリスクがあります。今後のガソリン価格の動向は、米国経済を見る上で重要です。
また、個人消費の動向に大きな影響を与えるのは、株価や不動産価格に代表される資産効果です。グラフ3は株式保有損益の対可処分所得比(対前年比)、不動産保有損益の対可処分所得比(対前年比)と個人消費の関係です。特に重要なのは不動産のうち、住宅価格の資産効果です。過去、不動産価格の資産効果と個人消費の連動性は高く推移してきました。住宅価格には下げ止まりの兆候がまだ見えません。2月9日に住宅の不正差し押さえ訴訟が米大手銀行と各州の間で和解し、2010年10月以降控えられてきた差し押さえ手続きが再開し、住宅在庫増加が住宅価格の下押し圧力になる可能性があります。住宅価格の下押しは個人消費の重石として注意が必要です(グラフ4)。
グラフ3:個人消費と資産効果

グラフ4:住宅価格と潜在的在庫

金融市場動向
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