金融市場NOW
米国の財政政策に関する議会審議と景気への影響
2011年12月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 来年の米景気に大きな影響を与える給与税減税、失業保険給付の延長審議は12月初旬から本格化。
- 最終的には同延長審議は民主・共和党間で合意に至り、景気下押し圧力は抑制されると見ています。
- 但し、2013年会計年度(12年10月~13年9月)は景気下押し圧力が残る模様。
オバマ政権が9月に打ち出した景気刺激策(オバマ雇用対策)は10月に事実上の廃案になりました。その後、オバマ大統領は景気刺激策のうち、個別に法案(2011年末に期限切れとなる給与税減税と失業保険給付の延長)を提出しました。この延長審議の行方は、来年の米国景気の行方に大きな影響を与えるため要注目です。これらの審議は12月初旬から本格化します(表1)。
表1:景気刺激策(オバマ雇用対策)内訳
減税 | 70 |
---|---|
雇用者側の給与税減税・新規雇用に対する減税
|
65 |
企業設備投資の100%償却を認める | 5 |
インフラおよび州・地方政府への支援 | 140 |
教員・警察・消防士の再雇用支援 | 35 |
学校の改修 | 30 |
道路・鉄道・空港へのインフラ投資 | 50 |
インフラ投資を促進するためのインフラ銀行の設立 | 10 |
空き地・空き施設の開発および修繕・復旧 | 15 |
失業救済 | 62 |
失業保険給付の延長 | 49 |
長期失業者の雇用に対する税控除 | 8 |
若者及び成人の職業訓練および雇用プログラム | 5 |
|
175 |
総額 | 447 |
仮にこの延長がない場合、2012年の家計可処分所得が1%程度押し下げられる試算もあり、 景気の下押し圧力となります。民主党は給与税減税の延長による約1,100億ドルの歳入減を補う財源として富裕層に対する増税を挙げていますが、共和党は富裕層増税に反対しており、両党間の意見が対立していました。ただ、共和党のマコネル上院院内総務は減税延長による歳入減を補う財源の共和党案を協議した上で、給与税減税延長支持に転じた模様で、最終的には減税延長は合意に至るものと見られます。
グラフ1は、オバマ雇用対策のうち減税部分のみが成立する想定で試算した景気刺激策の支出(一部推計)です。この場合、2012年会計年度(2011年10月~12年9月)の景気下押し圧力は抑制されます。ただ、2013年会計年度(2012年10月~13年9月)に関しては景気下押し圧力が大きく残ることになります。一方、仮に、延長に至らない場合、グラフ1の点線棒グラフ部分の支出が剥落することになり、大幅な景気下押し圧力がかかることになります。
グラフ1

- 10年12月の追加措置のうち企業向け100%加速度減価償却の影響は除いている。
金融市場動向
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