金融市場NOW
量的緩和(QE)と金融市場の関係
2011年09月02日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 量的緩和のマクロ的効果は、住宅市場・雇用市場を見る限り、奏功したとはいえないが、株式市場を中心としたリスク性資産の上昇には大きく貢献した。
- 9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)に向けて量的緩和第3弾(QE3)発動の可能性が高まれば株価の下支え要因に。
バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は8月26日ジャクソンホールでの講演において、 追加の金融緩和策についての具体的な言及は避けました。一方で政策について、より十分な協議ができるように、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)を、2日間(9月20、21日:もともとは1日のみ)に延長すると述べました。また、FOMC議事録では、総じて金融緩和寄り(ハト派的)な理事のコメントが注目され、量的緩和第3弾(QE3)を含む追加緩和期待が維持されることとなりました。
量的緩和は2008年以降、2度行われていますが、そのマクロ的効果は、住宅市場・雇用市場を見る限り奏功したとはいえません(グラフ(1)(2))。
グラフ1:過去の量的緩和と住宅価格指数

グラフ2:過去の量的緩和と長期失業期間

一方で、量的緩和は米国株やコモディティ価格の上昇には大きく貢献してきました。2008年8月のリーマンショック以降、米国株やコモディティ価格が上昇しているのは、基本的に量的緩和の実施局面だけです。このこともあり、8月26日のバーナンキFRB議長の講演で台頭したQE3発動の思惑等を背景に株価やコモディティ価格は底堅くなってきました (グラフ(3)(4))。
グラフ3:過去の量的緩和局面における米国株S&P500の推移

グラフ4:過去の量的緩和局面におけるコモディティ価格の推移

現状、米国は財政上限問題を抱えており、財政面からの大規模な景気刺激策に多くは期待できません。通常、景気を刺激する政策の組み合わせ(ポリシーミックス)は表(1)のケース4ですが、現状は財政の縛りからケース2になっています。この環境の中で、景気刺激は金融政策に頼るところが大きくなるため、9月のFOMCではQE3を含むあらゆる手段が検討される模様です。
表1:財政・金融・通貨政策の組み合わせ(ポリシーミックス)
財政政策 金融政策 通貨政策 政策目標・期待される経済効果 | ||||
---|---|---|---|---|
ケース1 | 財政緊縮 | 引き締め | ドル高 | 景気過熱抑制 |
ケース2 | 財政緊縮 | 緩和 | ドル安 | 財政赤字削減・経常黒字拡大 |
ケース3 | 積極財政 | 引き締め | ドル高 | 財政赤字拡大・経常赤字拡大 |
ケース4 | 積極財政 | 緩和 | ドル安 | 景気刺激 |
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