金融市場NOW

欧州債務問題の進捗状況

2011年07月04日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
  • ギリシャの8月末までの国債償還・利払いに関する資金繰りには目処が立ち、目先のデフォルト(債務不履行)リスクは後退。
  • 但し、ギリシャの2012年の国債市場復帰(中・長期債を発行しての資金調達)は困難であり、2015年までに総額2,000億ユーロの資 金不足となる計算。今後、追加金融支援とウィーンイニシアティブ型措置※を組み合わせた対応がなされよう。

6月30日にギリシャ議会は、賛成155票、反対138票で追加財政緊縮策(グラフ1)を可決しました。これ により、昨年5月にギリシャと国際通貨基金(IMF)・欧州連合(EU)が合意した期間3年総額1,100億ユーロのギリシャ支援金のうち、120億ユーロ相当の送金が実施される運びとなりました。このため8月末までに予定されている国債償還・利払いに関する資金繰りに目処が立ちました。従って、目先8月末までのデフォルトリスクは後退しました(グラフ2)。

グラフ1:ギリシャの追加財政緊縮策の骨子

出所:各種報道のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ2:今後のギリシャ国債等の償還・利払い予定

出所:ブルームバーグ、各種報道のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ3:ギリシャの資金調達計画:IMF2011年3月第三次レビュー

出所:IMFのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

2011年3月に発表されたギリシャの資金調達計画によれば、ギリシャは2012年に中・長期国債の発行を再開し、市場から資金調達をする計画になっています。しかし現状では、2012年の市場復帰は困難で、2015年までに総額2,000億ユーロ規模の資金不足となる計算になります(グラフ3)。このためEUとIMFによる追加支援の獲得がデフォルト回避に向け不可欠な状態です。ギリシャのパパンドレウ首相は「追加支 援について昨年5月(1,100億ユーロ)と同規模が必要になる」との見通しを示しています。追加の支援枠を獲得することや、既存の1,100億ユーロから、支援を受け続けるには3ヵ月に一度の頻度で財政緊縮計画の達成状況に関する審査を受け、これをクリアすることが条件であるため、ギリシャの資金調達は依然として綱渡り状態が続くことになります。

今後のギリシャ支援は、追加支援枠の獲得に加え、ウィーンイニシアティブ型措置※を組み合わせた対応が予想されます。これに対し、格付け会社各社はウィーンイニシアティブ型措置をデフォルト相当と評価しており、今後の動向が注目されます。

  • ウィーンイニシアティブ型措置
    主要民間債権者(銀行)がギリシャ向けエクスポージャーの維持に自発的に同意して、償還期限を迎えるギリシャ国債の大部分の借り換え(ロールオーバ-)が担保されるという枠組み。2009年のハンガリー救済では、約8割の債券がこの措置で借り換えされている。

グラフ4:欧州債務国向け支援額と支援資金枠

出所:欧州中央銀行(ECB)、各種報道のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

ギリシャを含むアイルランド、ポルトガル等欧州債務国の資金繰りに万全を期すセーフティーネット(安全網)を整備するため欧州行政サイドは支援資金の枠を拡大しました。具体的には欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の支援枠が従来の最大約2,500億ユーロから最大約4,400億ユーロ拡大されました(グラフ4)。

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