金融市場NOW
リスク性資産の今後の動向について
2011年06月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 今局面のリスク性資産の軟調傾向は、6月の米国の量的緩和(QE2)終了を控えたポジション調整の一環と見る。
- QE1終了後、各リスク性資産は約40~60営業日の調整期間を経て、その後反転上昇した。今局面は既にその動きを追いかけていると考えられる。
株式やコモディティに代表されるリスク性資産が、5月3日以降、軟調に推移しています。特に原油価格の下落は急激なものとなりました。この間、為替市場ではドルキャリー取引(※)の解消と思われる動きが見られ、ドルの買戻しが起きています。
- 低金利のドルで資金調達し、その資金を海外のより金利が高い通貨や資産で運用する取引手法。
今局面と同様の投資家のリスク回避行動が見られた過去の代表的局面は、米国の同時多発テロやリーマンショック等のショック事象が契機でした。グラフ1~4は各資産がそれぞれの金融ショック後にどのような価格の推移を辿ったかをグラフ化したものです(ショック発生当日を100として指数化)。
グラフ1

グラフ2

グラフ3

グラフ4

今局面のリスク性資産の下落は、6月に終了する米国の量的緩和(QE2)を控えたポジション調整の一環と考えられます。その意味では今後の動きを見る上で参考になるのは、過去の金融ショック後の動きではなく、QE1終了後(2010年3月に終了)の動きだと考えられます。実際、今局面の各リスク性資産の動きはQE2終了前ではあるものの、既にQE1終了後の動きと同様の軌跡を辿り始めてるように見えます。そのように考えると、QE2終了後の調整は期間・値幅とも限定的になるという考え方もできます。
QE1終了後、各リスク性資産(グラフ1~3)とも、およそ約40~60営業日の調整期間を経て底打ちし、その後上昇に転じたことがわかります。ちなみに今局面では5月3日を起点にすると調整期間は、既に約20営業日が経過しています。
QE2が終了しても市場に供給した流動性を即座に吸収するとは考えにくく、その意味では米国の金融緩和環境に著しい変化はありません。このため、現状の調整期間を経てリスク性資産に余剰資金が集まりやすい環境は続くものと考えます。
金融市場動向
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