金融市場NOW

円を巡る中・長期の為替需給

2011年05月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
  • 為替需給分析の観点から見ると、レンジ内で横ばいの推移が見込まれる。
  • 貿易収支は震災の影響を受け、縮小が見込まれる一方、対外証券投資はリスク回避から停滞。円高・円安圧力ともに限定的。

グラフ1

出所:日本銀行のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

為替相場の中・長期的な方向性を判断する一つのアプローチに日本の国際収支内訳のバランスを見る方法があります。日本は貿易黒字で国内に滞留した円を、主に対外証券・直接投資を通じて外貨に換え、海外に還流することを通じ、為替需給のバランスを保っています。リスク回避局面等で対外証券投資が停滞することなどで、このバランスが崩れた場合は、為替介入が行われ、結果的に為替需給バランスが維持されてきました。為替需給の波乱要因としては、その他収支が挙げられます。これは投機的フローと目される短期為替フローの収支です。2008年から2010年は、これが円高圧力となりました(グラフ1)。2011年2月現在では、貿易黒字の円高圧力は減少する一方、対外証券投資は停滞し、むしろ国内に資金が回帰しており、円高的なフローになっています。この現状を見ると、需給面からの円相場は、今のところほぼバランスしており、今後の状況を考えると、総じて横ばいの推移が想定されます。但し、投機的フローが円高圧力となる可能性には留意が必要です。

グラフ2

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

東北地方太平洋沖地震後、夏場に向けての節電やサプライチェーンへの懸念によって、輸出が減少し、エネルギー等の輸入が増加するとの観測があります。結果、貿易収支黒字が縮小し、円高圧力が軽減するとの声が聞かれます。過去、阪神淡路大震災後は電力需要が減少することに伴い、貿易収支黒字は、ほぼ半減しています(グラフ2)。

グラフ3

出所:ブルームバーグ、投資信託協会のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

日本からの対外証券投資動向を判断する一つの有力なデータとして、「外貨建て投資信託純資産残高」が注目されます。同データと「家計の景気先行き判断」は連動性が高く、東北地方太平洋沖地震後に大幅に低下していることを考慮すると、しばらくは対外証券投資が円安圧力の要因になる可能性は低いものと考えます(グラフ3)。

グラフ4

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

日本からの対外証券投資が増加するためには、日本と海外との金利差が一定以上拡大することが最低限必要です。足元、金利差は緩やかに拡大し始めましたが、まだ対外証券投資を活発化させるような水準に至っていません。今後、震災の影響で金融緩和の長期化が予想される日本に対して、海外の主要国の多くが景気回復観測の中、利上げに転じれば、対外証券投資を背景とした円安圧力が回復するものと考えます(グラフ4)。

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