金融市場NOW

インフレ懸念と株式市場

2011年03月01日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
  • 中東産油国地域の地政学的リスクの高まりを受けてインフレ懸念が台頭し、世界的な株価調整の要因になっている。
  • 地政学的リスクが沈静化すれば、世界的に回復傾向にあるファンダメンタルズに市場の注目が集まり、株価は下支えされよう。

EPFRグローバル社の集計によると、エマージング諸国株式投信(ETF)からの資金流出額(2月2日までの週間ベース)が約70億ドルと約3年振りの高水準を記録しました。この背景は、中東、北アフリカで進行中の反政府デモによる地政学的リスクの台頭に加え、国際的なコモディティ価格の高騰がインフレに拍車をかけるとの懸念が挙げられます。このため、物価の上昇(グラフ1)から中国、インド、ブラジル、インドネシア、韓国、ベトナム等のエマージング諸国が相次いで利上げを実施し、エマージング諸国の株価は年初来、軟調推移となっています(グラフ2)。
先進国の株価も、地政学的リスクの高まりから足元、反落していますが、米国を中心とした先進諸国は依然、低インフレやデフレの渦中(グラフ1)にあり、金融緩和は継続されるとの見方が強く、かつ、景気回復観測も強まっており、株価サポート的な環境といえます(グラフ2)。

グラフ1

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ2

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ3

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

エマージング諸国を中心とした世界的なインフレ進行に市場の注目が集まり、足元は株価の調整要因の一つになっていますが、逆にデフレ環境にある日本株は、他のアジアエマージング諸国比で選好されている模様で、年初来、資金流入が継続しています(グラフ3)。

グラフ4

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

産油国が集中する中東地域の地政学リスクは、原油価格の高騰を招き、インフレ懸念を醸成しますが、現在の米国の原油在庫は最高水準にあるため、2008年夏場のように、原油在庫が急激に低下し、需給懸念等から原油価格が最高値をつける環境とは異なります。このこともあり、原油高を受けた米国内のインフレ期待は落ち着いたものになるとの見方もできます(グラフ4)。米国のカーニー報道官は、中東での騒乱から原油の供給が削減されたとしても米政府は対応できるとコメントしています。

グラフ5

出所:ICIのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

米国投資信託のマネーフローを見ると、インフレ懸念が進行しているエマージング諸国を含む非米国株投資信託から低インフレ下にある米国株投信に資金が流れているのが観測できます(グラフ5)。

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