金融市場NOW
日本長期金利の上昇は続くのか
2010年12月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 米日の低インフレ環境を考慮すると持続的な金利上昇は自ずと限られる。
- 国内各部門の資金余剰状態を背景に債券の需給は良好であり、金利低下要因。
米国の第2弾量的緩和が発表された11月上旬以降、日本の10年国債利回りは米国の10年国債利回りに連動し上昇しています(グラフ1)。ここ約5年の両者の日次の相関※は平均で0.76と高く、米国金利の動向が日本の金利の先行きを左右する重要な要素になっています。その意味で、米国金利に大きな影響を与え、FRB(連邦準備制度理事会)が重要視する米国のインフレ指標(コアPCEデフレーター)を見ると、低下傾向(金利低下圧力)が続いています。また、FOMC(米連邦公開市場委員会)の2010年~2012年の同インフレ予想レンジを見ても米国金利、ひいては連動性の高い日本の長期金利上昇につながるとはいえない落ち着いたレベルになっています(グラフ2)。海外要因からは、日本の金利の持続的な上昇は想定しにくいものと考えます。
- 相関が+1に近い程、2つの連動性が高いと考えられる。
グラフ1

グラフ2

債券の需給要因は引き続き良好な状態にあるようです。グラフ3は、国内銀行のおおまかな預金・貸出ギャップ(実質預金+CD平均残高から総貸出平均残高を差し引いた金額)は、現状は、過去最高水準のカネ余り状態を示唆しています。カネ余りの中、リスク回避姿勢が根強く、国内銀行を中心とした投資家の債券需要は底堅く推移し、金利上昇を抑制するものと考えます(グラフ4)。
グラフ3

グラフ4

グラフ5

出所:日銀のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成
現状は民間非金融部門企業も資金余剰状態にあり、銀行から見た企業の資金需要は減少傾向にあります。こちらも金利上昇の抑制要因です(グラフ5)。
グラフ6

住宅ローン金利等を含む国内銀行の新規約定平均貸出金利は、過去約13年、10年国債金利の上限近傍となる傾向が見られます(グラフ6)。これだけを見ると金利の上昇余地は限定的に見えます。
金融市場動向
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