金融市場NOW
日米量的緩和の動向とドル/円の関係
2010年11月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 米国追加緩和の影響は、国債購入とデフレ懸念後退(インフレ期待の醸成)の綱引きとなり、金利低下要因にはならず。
- ドル/円は、米国の追加緩和出尽くしによるドル底入れを模索する展開を見込む。
日米の中央銀行は国債等を民間から購入し、その代金を準備預金に払い込むことを通じ、お金の供給量を増やしています。これを量的緩和といいます。米国は11月3日(執筆時=10月28日)に第2次量的緩和(QE2)を決定するとの期待があり、資金供給量の日米格差の観点からドル安路線は変わらないと見る向きがある(グラフ1)一方、市場の一部では、早くも量的緩和が実現した後のインフレ期待が醸成されています。市場のインフレ期待を示す5年インフレ債ブレークイーブンレート(インフレ債-国債利回り格差)が急激に上昇しているのはその証左です(グラフ2)。
グラフ1

グラフ2

グラフ3

米国はデフレ回避のため、量的緩和を通じ、人為的にインフレ環境を作ろうとしています。このため、米国のインフレ期待は高まっています。一方、日本のインフレ期待は高まらず、日米のインフレ期待格差は日米金利差の拡大観測を喚起し、ドル/円のサポート要因になっています(グラフ3)。11月3日の第2次量的緩和で、緩和打ち止め感が醸成された場合もドルの底入れ観測が広がるものと考えます。
11 月3日に発表される予定である第2次量的緩和の内容次第では再度、米国金利が低下し、円が高値更新する可能性も否定できません。その場合、日銀が更に資産買い入れを拡大し、追加の量的緩和を打ち出すかに注目が集まります。日銀の保有資産はピーク時と比較すると約35兆円(約4,200億ドル)(グラフ4)、かつ長期国債保有残高は「銀行券ルール※」で定められている上限である日銀券発行平均残高よりも約21兆円(約2,600億ドル)少ないため(グラフ5)、2008年末以降の米国の大規模量的緩和ペース(月に約800億ドル)に匹敵する資産購入も不可能ではないとも見てとれます。また、銀行券ルールの対象外である基金の拡大を通し、国債を買い入れる可能性も視野に入ります。日銀が円の高値更新局面で大規模量的緩和に乗り出せば、それはドル/円のサポート要因になるものと考えます。
- 日銀が引き受ける長期国債の総額を、日本銀行券の流通残高以下に収めるルール。
グラフ4

グラフ5

金融市場動向
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