金融市場NOW
ユーロ圏銀行のストレステスト(健全性審査)とユーロの推移
2010年08月02日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- ストレステストは、ある程度の不透明感の払拭につながり、目先のユーロ安圧力は後退。
- ユーロ・米国間の2年国債金利差は約4ヶ月振りにユーロをサポートする要因に転じた。
7月23日に発表された最悪シナリオ(景気後退+ソブリンショック:国債の価格下落)をベースにしたストレステストは、対象銀行91行のうち、7行が不合格となり、合計35億ユーロの資本増強が必要とされました(グラフ1)。市場の予想(20行弱が不合格・300億~1,000億ユーロ弱の資本増強要す)よりも良好な結果であり、市場参加者はある程度、好意的に受け止めた模様です。実際、ストレステスト発表後の欧州銀行金融サービス指数は急上昇しており、ユーロも連動しています(グラフ2)。
ストレステストの結果については、足許の欧州経済指標の改善によって景気悲観論が後退し始めていた事に助けられた面も大きく、内容に関しては様々な見方があります。銀行の情報開示により、ある程度の透明性が確保された点は共通して評価されていますが、今後の景気動向次第という点も否めないところです。
グラフ1

※(ス)→スペイン、(ギ)→ギリシャ、(独)→ドイツ、(イ)→イタリア、 (英)→イギリス、 (仏)→フランス)
グラフ2

グラフ3

ユーロ圏金融機関の社債のデフォルト(債務不履行)に対する保証コスト指数(保険料の一種)は、ストレステストの結果を好意的に受け止め、これに連れユーロ/円も上昇しています(グラフ3)。
グラフ4

金融危機局面では、通常、銀行間でドルの資金需要が高まることから、ドル高圧力/ユーロ安圧力が強まる傾向が見られますが、良好なストレステストの結果等が追い風となりドル需要は後退し、ユーロは反発しています(グラフ4)。
グラフ5

ユーロ圏と米国の2年国債金利差が、約4ヶ月振りにユーロ圏優位に転じたこともユーロのサポート要因として挙げられます(グラフ5)。
グラフ6

相場にはアノマリー (相場のクセのようなもの)と呼ばれるものがあります。過去の代表的な通貨危機の暴落期間は約5~8ヶ月程度ですが、今回のユーロ通貨危機も7ヶ月の暴落期間を経て、反発しました。過去のアノマリーを今回も踏襲し今後も推移するのか要注目です(グラフ6)。
金融市場動向
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