金融市場NOW
日米のデフレ環境を経た失われた20年と株価の推移
2010年02月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 大恐慌(1929年~)以降の米国株は約20年かけて上昇に転じた歴史がある。
- 日本はバブル崩壊後今年で約20年が経過するが、現在迄の株価の動きは大恐慌以後の米株の動きの跡をたどっているように見える。
- 日米の株価の値動き(高値~安値までの下落率)にはアノマリー(相場のクセのようなもの)的なゆるい特性が見られる。
政府は昨年11月に、3年5ヶ月ぶりに「デフレ宣言」を行いました。デフレとは簡単に言うと、総需要が総供給を下回ることが主たる原因で起き、物価や株価に代表される資産の下落圧力となります。この事は過去を含め目下の日経平均の重しとなっています(グラフ1参照)。2001年の政府のデフレ宣言以降、日本株はデフレ環境下(消費者物価指数がマイナス域)で低迷し、脱デフレ宣言とともに上昇していることがわかります。
グラフ1

デフレ環境下での株価の下落は、なにも日本特有の現象ではなく、1929年の大恐慌時の米国でも観測されます(グラフ2参照)。日本の株価の先行きを見る上で、デフレという共通のファクターを通して大恐慌時の米国株との比較をするのは重要だと思われます。米国株はデフレ環境を経て、株価が1929年当時の高値まで回復するのに、25年弱かかっています。当時の米国株(1929年~1954年)のチャートに、1989年のバル崩壊前の日経平均の高値~現在までの約20年間のチャートを並べると、高値からの下落率を含め、総じて似たような値動きをしていることがわかります。米国株は、1929年の高値からデフレを経て、20年目から急上昇しています。アノマリー的(相場のクセのようなもの)発想をすると日本株は1989年の高値から今年が約20年目になります(グラフ3参照)。今後の日本株の動向が過去の米国株の動きの跡をたどるのか要注目です。
グラフ2

グラフ3

余談ですが、金融・資本市場の法・制度整備、規制緩和の歴史を紐解くと、日本が米国の後を約20年遅れで追いかけている構図が見えてきます(表4参照)。ここでもまた20年という数字が登場したのでご紹介しておきます。これもアノマリーなのでしょうか?
表4
米国 | 日本 |
---|---|
1929年~ 大恐慌/デフレスパイラル |
1949年~ デフレ不況(ドッジ・デフレ) |
1975年 株式売買手数料完全自由化 |
1999年 株式売買手数料完全自由化 |
1978年 401Kプラン法案成立 |
2001年 401Kプラン開始 |
1980年代半ば ~M&Aブーム(LBO) |
2006年 M&Aと株主還元活発化 |
相場のクセのようなものをアノマリーといいますが、米国株の主要な下落局面での、高値から安値までの下落率を見てみると、およそ40%~50%程度のゾーンに集中していることがわかります。2007年10月からの今下落局面も-56%で底打ちし、反発していることがわかります。唯一の例外は1929年からの大恐慌の局面です。こちらは-89%もの下落を示現しました(グラフ5参照)。日本株にも同じアプローチをしたのがグラフ6です。こちらは、外国人投資家が本格的に日本株を投資対象に捉えはじめた1998年以前と以後で、下落率が異なるようです。以前の傾向は総じて-40%台に集中しているのに対し、以後は60%近くになっています。出遅れ感が対世界比で顕著だった日本株の今局面の下落率が米国株とほぼ同じ50%台後半に留まったことも、一部にある世界の株価が底打ちしたとの観測を高める要因の一つなのかもしれません。
グラフ5

グラフ6

金融市場動向
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