金融市場NOW
2010年の為替市場の注目点
2010年01月04日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 各金融機関の予想平均値によると、米国の利上げは2010年第3Q(第3四半期)から開始されるとのこと。
- 過去を見ると米国の利上げ局面は時間差をおいて基本的にはドル高局面が多い。
- 各金融機関の予想平均値によると日本は世界でも有数の2010年を通じて金利を据え置く国に。
- 2007年以降の円高進行を受けて、購買力平価説による円の割高感は現在ほぼ解消され、一部の通貨では対円で過剰な割安状態も。
2009年の為替相場の構図は、米国の量的緩和を含む金融緩和が市場におけるドル余剰の状態を醸成し、それがドルの価値を下げるというものでした。各金融機関の予想では、2010年の第3Q(第3四半期)に米国の利上げを予想する向きが集中しています(グラフ1参照)。仮に、この予想通りの結果になった場合、2009年に相場を席巻したドル安の環境が大きく変わることが視野に入ります。グラフ2で過去を見ると、90年代前半の緑囲い部分を除き、時間差は多少あるものの、基本、米国の利上げ局面はドル高局面となることが多いことがわかります。ちなみに、90年代前半は対日貿易摩擦の解消に当時のクリントン政権が政治的な円高圧力をかけていた局面であったため、利上げ局面にもかかわらずドル高局面にならない例外的な時期でした。
グラフ1

グラフ2

グラフ3

米国の政策金利と主要10カ国(※)政策金利の平均値との格差は、米国の金利水準が世界との相対的比較感の中で高いのか低いのかを表します。この格差が基調として米国優位に向かう局面はドル高局面が多いようです(グラフ3参照)。市場の予想通り、2010年の第3Qに米国の利上げが開始された場合の金利差動向はドルの行方を占う上で要注目です(グラフ3参照)。
- カナダ、ユーロ圏、日本、英国、デンマーク、スウェーデン、スイス、豪州、ニュージーランド、ノルウェー
グラフ4

各金融機関の予想平均値では、2010年を通して、日本は利上げを実施しない数少ない国の一つになっています(グラフ4参照)。このため2010年は他国との金利格差が拡大傾向を辿る模様です。為替市場の方向性を決める重要な要素の一つは金利差であるため、2009年の円高傾向が2010年には反転するとの見方もあるようです。
グラフ5

日本の政策金利と主要10カ国(※)政策金利の平均値との格差は、日本の金利水準が世界との相対的比較感の中で高いのか低いのかを表します。この格差が基調として日本優位に向かう局面は円高局面が多いようです(グラフ5参照)。市場の予想通り、2010年を通じて日本の金利が据え置かれた場合の金利差動向は円の行方を占う上で要注目です(グラフ5参照)。
- カナダ、ユーロ圏、米国、英国、デンマーク、スウェーデン、スイス、豪州、ニュージーランド、ノルウェー
グラフ6

グラフ6は購買力平価説によってOECDが算出した各国通貨の対円での適正価格からの乖離幅(対円での割高/割安)です。米国が金融危機を受けて利下げを開始した2007年9月18日時点では円は各国通貨比、割高でしたが、その後円高が進み、現在は割高がほぼ解消され、米ドル、ユーロ、英ポンド等の主要通貨は割安状態になっているものも観測されます。またメキシコペソを筆頭に一部の通貨群は過剰な割安状態になっています。購買力平価は二国間の長期的な適正為替水準を示唆しますが、対円での割安通貨の動向に2010年は要注目です(グラフ6参照)。
金融市場動向
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