金融市場NOW
景気回復と高リスク金融資産市場の改善
2009年10月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 2010年の財政出動の頭打ちから景気刺激効果が薄れる日本経済は先行き不透明感あり。
- 豪、カナダ、米は2010年も今年並みの財政出動が計画されており、景気失速懸念は少ないとの見方が多い。
- 景気回復・リスク回避緩和局面の現下、高リスク市場のパフォーマンスは堅調に推移。
リーマンショックから1年経過した現在、早くも世界的な景気回復観測が台頭しています。100年に一度の金融危機と言われた割には早期の回復との印象があります。この背景には、迅速な金融緩和政策に加え、財政出動による景気刺激効果が大きいと考えられます。景気悲観論者の中には、来年、景気刺激策が頭打ちするに伴い、一部の国の景気が失速するとの観測があります。グラフ1を見ると、日本には特に、この見方が当てはまるかもしれません。一方で、米、豪、カナダなどは、2010年も今年並みの財政出動が計画されており、景気失速懸念は少ないとの見方もできます。この見方を反映してか、各国のGDP成長率予想(民間予想中央値)は、2010年に景気刺激策が減速する日本が最低な一方、豪州、米国、カナダが高くなっています。(グラフ2参照)
グラフ1

グラフ2

グラフ3

景気の回復は金融市場の安定に寄与しています。金融危機を受け、リスク資産の代表格である米国のハイイールド社債起債額は昨年大幅に減少しました。しかし、今年に入っての起債額は例年同時期を大幅に上回る記録的ペースで伸びています。これに伴い、同じくリスク資産の代表格である株式市場も反発しています。両市場の回復は、市場のリスク回避姿勢緩和の証左といえます(グラフ3参照)。
グラフ4

景気回復観測や金融市場の落ち着きから、より高い収益を目指してリスク性資産への投資が復活している模様です。その証拠に景気回復観測が急速に強まった4月1日を100とした世界株指数(現地通貨ベース)と同エマージング諸国株指数を比較すると後者が前者を凌駕しています。また、ヘッジファンドの4月1日を100としたパフォーマンス指数は、株価に劣後しています。ヘッジファンドのリスク回避的な投資行動が仇となっているのか、ヘッジファンドは株を「買えていないリスク」にさらされているのかもしれません。今後、株価が一時的に下落した局面でのヘッジファンドの買いも予想され、株式相場は下方硬直性を持つと見る向きがあるようです(グラフ4参照)。
景気回復観測や金融危機の落ち着きを背景に、通貨市場においても、リスクを積極的にとるような投資行動が活発化してきた模様です。グラフ5、6はともに、リスク指標の代替指数と円キャリー取引のパフォーマンスです。青ラインはG10通貨群(※1)、緑ラインは主要地域別の高金利通貨群(※2)での円キャリー取引をした場合のパフォーマンス指数です。赤ラインのリスク指標の代替指数がリスク選好的になるに伴って、よりリスクの高い高金利通貨群がG10通貨群のパフォーマンスを上回ってるようです。
- 豪ドル、ニュージーランドドル、スウェーデンクローナ、カナダドル、ポンド、ノルウェークローネ、デンマーククローネ、スイスフラン、ユーロ、米ドル
- ニュージーランドドル、豪ドル、ブラジルレアル、ノルウェークローネ、南アフリカランド、カナダドル
グラフ5

グラフ6

金融市場動向
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