金融市場NOW
日米投資家のリスク回避姿勢および景気とドル/円の関係
2009年07月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
- 米国の家計の資産配分は株式投資比率が急減する一方、現・預金や国債などの安全資産比率が増加しています。
- 日本の家計の外貨建て金融資産への投資は、一時の急激な落ち込みから回復傾向にあります。
- ドル/円は世界景気が回復する局面で円高になり、世界景気が減速する局面で円安になる傾向があるようです。
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米国の家計の金融資産(株や住宅など)が急減しています。この影響もあり、家計は支出を減らし、負債を圧縮する傍らで、貯蓄を増やす傾向にあり、依然、守りの姿勢が色濃く出ています。ひいては、それが消費や景気の足かせになりそうです。足元の景気楽観論の、揺り戻しを見る向きも多いようです。
グラフ2

金融危機の最悪期は脱したようではありますが、先行きの不透明感は完全に払拭されていないようで、米国の家計の投資行動は、株式のようなリスク性資産の割合を落とす一方で、現・預金や国債などの安全資産の割合を上げています。その意味では、リスク回避姿勢の終焉にはまだ時間がかかりそうです。
グラフ3

日本の家計の外貨建て金融資産への投資は、足元の金融市場の落ち着きを反映し、一時期の急激な落ち込みからは回復したため、約3期振りにプラス域となり、リスク許容度改善の兆候が窺われます。但し、世界経済は最悪期を脱しただけで、本格的な回復にはまだ時間を要すると考えられることから、日本の家計のリスク許容度も緩やかな回復傾向を辿るものと考えられます。その意味では、対外資産への活発な投資を背景とした急激な円安は見込めないかもしれません。
投資家のリスク許容度が改善するか否かの一つのカギは、世界景気の動向です。過去、世界景気の動向にドル/円は逆相関的に推移する傾向が見られました。例えば、 先進7カ国のGDPがゼロ近辺ないし、マイナス成長域に落ち込む局面は円安傾向(図表④囲い部分参照)。一方、先進7カ国GDPがゼロ近辺ないし、マイナス成長域からプラス成長域に回復する局面は円高傾向(図表⑤囲い部分参照)という具合です。世界景気は最悪期を脱したとはいえ、本格的な回復軌道に乗るにはまだ時間がかかりそうです。この前提に立つと、過去の傾向から、過度の円高の可能性は限られると見ることもできます。
グラフ4

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金融市場動向
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