金融市場NOW
米国は最悪期を脱したのか?~米国経済の現状~
2009年05月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
米国の一部の経済指標に最悪期を脱しつつあるような兆候が見られます。バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長も「米国経済の急速な下降ペースに鈍化の兆しが現れてきた」とのお墨付きを出しています。そこで今回は、米国経済の現状を確認してみました。
(グラフ1)米家計の純資産の状況と貯蓄率の関係

米国景気が急激に落ち込んだ理由の一つとして挙げられるのは、株価や住宅価格の急落を受けた家計の純資産(※)の大幅な目減りがあげられます。家計の純資産の可処分所得に対する倍率は5倍以下に落ち込み、家計の消費活動を圧迫する要因となってきました。また、同指数と貯蓄率の間には過去、一定の連動性が見られることから、今後は、貯蓄率が上昇し、その間は消費が抑制されるとの見方があります。但し、足元は株価が反発し、市場環境が最悪期を脱したと考える向きも出てきました。資産市場の動向は消費の先行きを占う上でも要注目です。
- 金融資産だけでなく、住宅等の実物資産含む
(グラフ2)米国の信用市場の現状と米国株

米国発の金融危機・信用市場の崩壊はご存知の通り、昨年9/15のリーマンショック以降、急速に拡大しました。銀行間融資の貸し渋りの度合いを示すと言われるLIBOR・OISスプレッド(※)はリーマンショック後、急拡大し、リスク資産の代表格である米国株(NYダウ)は連れて急落しています。足元、LIBOR・OISスプレッドはFRBによる信用緩和策を受けてリーマンショック前の水準まで改善しています。米国株もこれに連れ、反発しています。信用市場の正常化、リスク回避緩和が株の上昇を促す構図となっている模様です。
- ロンドン銀行間市場金利(LIBOR)と将来の政策金利を予想して取引されるOIS市場金利の利回り格差
(グラフ3)米国の社債起債額の推移

2009年これまでに起債された米国投資適格社債の総額が、過去と比較して高い水準を記録しています。ハイテクバブルが崩壊し、起債額が低下した2000年通年での起債額の約9割が現在既に起債されています。また過去最高の起債額を記録した2007年通年の起債額の約4割が既に起債されています。ただ、信用力の低いハイイールド社債の起債額は低調なままです。投資適格社債に加え、ハイイールド社債の起債にも厚みが戻るまでは、「完全な信用市場の回復」とは言えないのかもしれません。
(グラフ4)米国コア小売売上高

米国の実質GDP個人消費の先行指標とも見れるコア小売売上高(自動車・建設資材・ガソリンを除く小売売上高)の3ヶ月前比年率が大きく改善しています。この指標は米国実質GDP個人消費の先行的な指標にも見られるため要注目です。
(グラフ5)ISM指数(米供給管理協会製造業景気指数)

米国の実質GDPの先行指標と考えられているISM指数(全米供給管理協会製造業景気指数)は4月下旬現在、低下したままですが、先行指標である新規受注指数と在庫指数の格差が大きく反発しています。このことは在庫調整による減産の一巡を示唆しているとの声もあるようです。
(グラフ6)米住宅ローン環境

FRBの住宅モーゲージ債購入措置等を受けて住宅ローン金利が低下傾向にあります。これを受けて住宅ローンの借換えが進み、住宅ローン申請指数が上昇しています。このことが住宅市場の底入れにつながるとの声も聞かれます。
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