金融市場NOW
豪ドルと中国経済の関係について
2009年03月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
昨年後半に豪ドルは対円で急落し、今年は今のところ底堅く無難な推移が続いています。この動きには、豪ドルを取り巻く環境が豪ドル支持的に変化し始めたことが反映されているのかもしれません。今回はこの点に焦点を当てました。
購買力平価による各国通貨の割高/割安感

(注)2/18時点消費者物価指数により算出
購買力平価説(※)により計算された均衡為替レートと実際に取引されている為替レートの乖離を見ると豪ドルやニュージーランドドルが特に割安な水準に位置しているようです。
- 一物一価が成り立つとき、国内でも海外でも同じ商品の価格は同じ価格で取引されるので、2国間の為替は2国間の同じ商品を同じ価格にするように動き、均衡するという考え方。購買力平価から実際の為替が大きく乖離した状態が長期化することは難しいと考えられている。
財政出動による景気刺激策の対GDP比

各国はこぞって景気刺激策を打ち出しています。中でも目を引くのは、4兆元(約57兆円)のインフラ整備(住宅、高速道路、空港、電力網建設)を中心とした中国の景気刺激策です。これは、中国の資源需要を押し上げ、世界有数の資源輸出国である豪州経済にプラスに働くとの見方があります。豪州自体も国の経済規模に対して巨額といえる420億豪ドル規模(約2兆4700億円)の景気刺激策を打ち出しています。これは豪州政府試算によると 2008-09年度の実質GDPに+0.5%、2009-10年度に+0.75%~1%の押し上げ効果があるとしています。今後の通貨市場は景気後退からどの国が抜け出すのかを織り込みに行くのかもしれません。
中国経済と豪ドル

前述の通り、中国経済の勢いが維持されれば、それは豪州経済にもプラス要因と考えられます。豪ドルはこの密接な経済関係を反映し、中国のGDPと連動性高く推移してきました。中国の巨額の景気刺激策もあり、中国の温家宝首相は今年の中国経済が約8%の成長になると公約を示しました。これが達成されれば、豪ドルはその恩恵を受ける通貨の最有力候補なのかもしれません。
政策金利と住宅ローン金利の変化幅

世界的な住宅価格の下落が続いており、景気後退要因の一つになってきました。そこで各国金融当局は政策金利を下げ、住宅ローン金利の低下を進めてきました。米英では政策金利の低下幅に比して、住宅ローン金利がそれほど低下していません。その一方、豪州では政策金利と住宅ローン金利の感応度が比較的高くなっています。この環境は豪州の住宅市場にとってプラスと考えられます。
シカゴ・マーカンタイル取引所の豪ドル建玉

昨年後半の豪ドル急落の主要因となった投機筋のポジションの解消の嵐は、一巡した模様です。足元は、小幅な豪ドル売り持ちポジションに転じています。為替市場はこれにより、景気刺激策の規模や景気回復の可能性等、ファンダメンタルズ要因を反映した相場つきに移行してゆく素地ができたのかもしれません。
海上船積運賃指数と豪ドル

原材料の海上船積運賃(世界の原材料輸送コスト)は年初来で約150%も上昇しました。中国の約57兆円の景気刺激策が今後、石炭、銅、鉄鉱石(中国は世界最大の消費国)等、原材料価格の押し上げにつながると見る向きが増えてきたことを反映しているのかもしれません。豪州は世界有数の資源輸出国であるため、原材料価格の先行指標といわれる海上船積運賃指数の上昇は豪ドルのプラス要因と考えられます。
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