金融市場NOW
インフレの金融市場への影響
2008年06月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
4月中旬に開催された7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の声明で「インフレ懸念」が表明された以降、世界的に金利が上昇し始めました。米国では4月下旬のFOMC(米連邦公開市場委員会)で「利下げ休止」ともとれる主旨の声明が発表された以降も、インフレに懸念を表明する発言が金融当局者から相次いでいます。このため市場を動かす大きなテーマの一つとして、現在、インフレ動向が注目されるようになりました。今回はインフレが金融市場に及ぼす影響に焦点を当ててみたいと思います。
コモディティ指数と消費者物価指数

原油に代表されるコモディティ価格の高騰に連動し、世界的にインフレ圧力が増加しています。このため、インフレ高進への対処として、政策金利を引き上げる国が増え、世界的に金利は上昇傾向にあります。
原油価格と米国10年国債実質利回り

実質利回り算出は、総合消費者物価指数を使用
質への逃避に加え、原油を中心としたコモディティ価格の高騰を受けたインフレの上昇等もあり、米国10年国債の実質利回りは、ほぼマイナス域に低下しています。金融危機を背景とした、質への逃避から急低下していた米国債利回りですが、投資家のリスク回避姿勢の緩和観測や、インフレ懸念が台頭する中では、投資妙味は後退してしまいます。
米ハイイールド債と米国債のトータルリターン

金融危機を背景とした、投資家のリスク回避姿勢から安全資産である米国債のトータルリターンがリスク資産の代表である米ハイイールド債のそれを上回った状態が続いていましたが、投資家のリスク回避姿勢の緩和や米国債の実質金利のマイナス化など、米国国債債の投資妙味の後退もあり、4月末から、米ハイイールド債のリターンが米国国債を超過しはじめました。リスク回避の緩和を裏付ける証左の一つと言えるかもしれません。
米国債券の実質利回り

※1 資産担保証券
※2 モーゲージ証券
※3 ハイイールド債
米国国債指数の実質利回りはマイナス化しており、インフレ観測が高まる中での投資妙味は後退しています。その一方、ハイイールド債の実質利回りは高水準であり、投資家のリスク回避姿勢が更に緩和されれば、高金利資産が見直されるかもしれません。
金融危機のピークアウト観測が台頭し、世界的に株価が上昇し始めた4月1日から5月下旬までのG10各国通貨の対円騰落率を見ると、国債の実質利回り水準が上位にある通貨、更なる利上げ観測が根強い通貨、および資源国通貨等が、より上位に入る傾向が見られるようです。通貨市場でもインフレを考慮した投資判断が行われている模様です。
G10各国の10年国債実質利回り

4月1日~5月27日のG10通貨の対円騰落率

金融市場動向
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