金融市場NOW
米国の減税・景気対策について
2008年02月19日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
米国当局は2008年度に1,517億ドル、2009年度に163億ドルの総額1,680億ドル(約18兆円)の減税・経済対策を3週間という異例のスピードで成立させました。今回はこの減税・経済対策の景気や金融市場への効果や影響などを分析してみたいと思います。
過去の経済対策の減税規模比較

2008年の経済対策総額1,517億ドルのうち約1,100億ドルが所得税の戻し減税に充てられます。過去の減税策の規模と比較しても経済効果はGDP構成比の約7割を占める個人消費を支え、景気にプラス寄与するものと考えられます。
米国の実質GDP 個人消費変化率

過去の減税は個人消費の活動を通して、実質GDPの押し上げに一定の寄与をしてきました(図表赤棒グラフ部分)。ちなみに2008年の減税は戻し税方式であり、5月には小切手の送付が開始されます。その時期以降の個人消費動向には要注目です。
米国の個人所得と個人消費

2003年に顕在化した「個人支出伸び率>個人所得伸び率」は2003年に成立した減税策の影響等を受けた個人所得の急激な伸びにより改善傾向を辿りました。現在は、「個人支出の伸び率<個人所得の伸び率」という健全な状態の中、減税策が成立しています。
減税などの財政政策や金融緩和、また通貨政策の3つの政策(ポリシー)を駆使して期待される経済効果を目指す枠組みのことを「ポリシーミックス」といいます。現在の米国のポリシーミックスは図表のケース4に該当すると考えられます。2月13日の景気対策関連法案の成立をもって景気刺激型のポリシーミックスが採択されていることが明確化しました。
財政・金融・通貨政策の組み合わせ
財政 政策 | 金融 政策 | 通貨の方向性 | 経済効果 | |
---|---|---|---|---|
ケース1 | 緊縮 | 引き締め | ドル高 | 景気過熱回避 |
ケース2 | 緊縮 | 緩和 | ドル安 | 財政赤字削減 /経常黒字拡大 |
ケース3 | 緩和 | 引き締め | ドル高 | 財政赤字拡大 /経常赤字拡大 |
ケース4 | 緩和 | 緩和 | ドル安 | 景気刺激 |
財政支出の状況

ポリシーミックスのなかで財政政策が緩和的な状況は、景気に対して刺激的な環境と言えます。図表は、実質政府支出伸び率の1970年以降の平均値(+1.8%)からの乖離幅をもって、財政が緩和的なのか緊縮的なのかを判断したひとつのアプローチです。これによると、2007年以降、緩和的財政政策が明確化してきました。
財政収支12ヶ月累計と個人支出

2003年以降の個人支出の下振れは、減税政策を含む景気刺激策等による財政支出の増加等により改善傾向を辿りました。その後、2004年以降は一転、財政緊縮策に連動し、個人支出は横ばい推移に転じました。今後予定されている減税策により、財政収支の赤字が拡大すれば、個人消費が回復する局面が見られるかもしれません。
金融市場動向
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