金融市場NOW

為替市場で起きていることを理解する

2007年11月15日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

為替市場ではドル/円が6月後半に124円台前半の円安値を示現し、その後、円が反転上昇し、11月中旬には一時110円台割れを示現しました。この円高の背景として、米国金融機関の損失拡大問題を契機とする米国株の下落や、米国景気の先行き不透明感に加え、米金融緩和の継続観測が挙げられます。足元の円高を受けて、有力金融機関は次々とドル/円の見通しを円高方向に修正しています。今回は、2005年1月を起点とした円安の流れが終了したのか検証してみたいと思います。

図表1.「ドル/円」

出所:ブルームバーグ

図表1.の(1)局面(赤矢印部分)は、世界最低の金利水準である円の地位が明確に相場つきに反映されたものです。この期間の各国通貨の対ドルパフォーマンスを見ると円が主要10通貨中、最低だったことがわかります(図表2.参照)。また、同パフォーマンスの順位を見ると、各国の政策金利の高い順(図表4.参照)とほぼ整合的であることが見てとれます。このことが示唆しているのは、この期間の為替相場は金利差が主要なテーマであったということです。

図表2.「図表1.の(1)局面における各国通貨の対ドルパフォーマンス)」

出所:ブルームバーグ

一方、図表1.の(2)局面(緑矢印部分)の同パフォーマンスは円が一転、対ドルで主要10通貨中で最強通貨になりました。他通貨の同順位を見ても、軒並み図表1.の(1)局面のパフォーマンス上位通貨が反転下落し、順位を下げていることがわかります。

図表3.「図表1.の(2)局面における各国通貨の対ドルパフォーマンス)」

出所:ブルームバーグ

この分析から示唆されることは、現状の円高は、2005年1月以降の円売りポジションが調整された結果であるという可能性です。足元の円高の主要因が相場で言われているように、「米国の経済や株の下落」であるならば、ドルを売る対価である通貨は円がある必要はないはずです。少なくとも、円のパフォーマンスが対ドルでNo.1になることはファンダメンタルズ的に整合性がないからです。米国経済の後退や株の下落をテーマにドルを売る対価である通貨は、米国経済減速や株の影響を最も受けにくい国の通貨を選択する方が整合的ではないでしょうか?日本はご存知の通り米国経済の減速の影響をまともに受けます。

図表4.「各国の政策金利水準」

出所:ブルームバーグ

円が対ドルで最強のパフォーマンスを挙げているという事実から推測されるのは、足元の円高は本流ではなく、単なるポジション調整であるということです。ポジション調整後も世界最低の金利水準にある円に世界から投資資金が集まり続けるとは考えにくいと思います。

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