アナリストの眼

文化の秋と五輪・パラリンピック

掲載日:2018年09月21日

アナリスト

投資調査室 吉沢 泰

記録的とされた猛暑も収まり、ようやく過ごしやすい日が増えてきました。
「秋と言えば?」という問いかけに、実りの秋、読書の秋、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋など思いつくものは人それぞれ。私は学生時代に熱心に音楽系のサークル活動にいそしんでいたこともあり、これから増えてくるコンサートを鑑賞したり、子どもを連れて音楽系のワークショップなどに参加したりして楽しみたいと思っています。

ところで、そうした芸術、文化系のイベントが、実は2020年に開催が予定されている東京五輪・パラリンピックと関係がある場合があるのをご存知でしょうか。
実は五輪・パラリンピック大会を開催する国は、さまざまな文化イベントによって構成される文化プログラムの計画と実行が義務付けられています。そのクライマックスは2020年の大会開催期ですが、現在はそれに向けて東京2020参画プログラムの8つの取組みテーマの一つ、「文化」に関連してさまざまな認定イベントが行われている、という状況なのです。

五輪・パラリンピック大会というと、一般的には「世界最高峰のスポーツ大会」というイメージをもたれる場合が多いと思いますが、なぜ文化プログラムの実行が求められるのでしょうか。
そのヒントは国際オリンピック委員会(IOC)及び公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)が掲げる「オリンピック憲章」にありそうです。導入部分にある「オリンピズムの根本原則」からの引用ですが、『オリンピズムは肉体と意志と精神の全ての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学である。オリンピズムはスポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するものである。』とあります。また『スポーツをすることは人権の一つである。すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。』とも宣言されています。すなわち、“スポーツはそれ自体を目的とするのではなく、文化や教育が一体となって初めて五輪・ムーブメントになるのであり、五輪・パラリンピック大会は単なるスポーツ大会ではなく、全ての人が人権を享受することができている象徴としてのイベントである”という解釈ができるのだろうと思います。

さて、こうした背景に紐づいたイベントが国内で開かれるわけですから、日本企業による人権への配慮について、これまで以上に関心が高まることになると見ています。
たとえば、私が担当する食品セクターでは、パーム油やカカオの調達持続性などは、国際的にも注目度が高い課題です。これは一つの例ですが、それぞれの企業がさまざまな課題を抱えていると思います。その一つ一つに常に絶対的な正解がある訳ではないでしょう。ただ、人権面でも十分に配慮された社内環境、顧客や消費者、調達先との関係づくりは、そもそも事業の持続性に結びつくものと考えます。企業の中長期分析を行うためのESG評価という側面からも、高い関心を持って調査していきたいと思います。

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