アナリストの眼

メガトレンドとESG

掲載日:2018年08月21日

アナリスト

投資調査室 堀井 章

「メガトレンド」という言葉をお聞きになった事がある方は多いと思います。この言葉に明確な定義があるわけではないですが、「時代の大きな流れや趨勢」といった意味合いで使われることが一般的です。単に「トレンド」という場合と比較しますと、「メガトレンド」は10年や20年といった長期にわたる世の中の変化を指し、その変化自体は必ずしも急激ではなく、むしろ緩やかな場合が多く、かつ後戻りできないようなニュアンスが含まれることも多いと思います。

わかりやすい事例としては、人口動態から予測される将来の変化が挙げられます。内閣府のホームページに掲載されている「平成29年版高齢社会白書」を見ますと、日本の高齢化の現状と将来予想が理解できます。当白書では、日本の総人口は既に減少を始めており2065年には9,000万人を下回ると予想されていること、2016年に27%だった高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は今後も一貫して上昇し2055年には38%に届くと予想されていること、15~64歳の生産年齢人口は減少が続くと予想されていること、などが説明されています。

このような人口動態に関連するメガトレンドは、社会に大きな変化をもたらし、これまでなかった新たな社会的課題を生みます。例えば、生産年齢人口の減少は、既に一部の業種で深刻な人手不足を引き起こしています。

また、別のメガトレンドとして取り上げられることがある「地球温暖化」については、それ自体が世界的な課題であり、国家レベルのエネルギー政策の見直しだけでなく、人々の生活様式もいずれ修正が迫られる可能性があります。

さて、弊社で行っている企業のESG(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)評価の一つの視点は、「事業を通じた環境貢献や社会貢献」です。事業を通じて、社会的課題(環境問題も含めて)を解決できれば、企業にとっても社会にとってもプラスであり、企業のESGの取組みとしては、理解がしやすいと思います。

メガトレンドは長期間にわたる社会の変化で、その変化は社会的課題を伴うことがある点を述べましたが、事業を通じてこのような社会的課題を解消していける企業は、長期にわたりキャッシュフローを創出していける可能性が高いため、長期的なESGの観点から高く評価できます。

社会に大きな影響を与えるメガトレンドですが、徐々に進展するものが多いので、アナリストとしても軽視してしまいがちです。やはり、目先の急激な変化の方が短期的な株価変動要因としては大きいからです。しかし、メガトレンドは長期に着実に進む可能性が高いトレンドですので、長期の社会的変化とその中での企業の活躍を想像する力が必要です。メガトレンドを軽視せず、想像力も働かせながら、長期的な社会的課題を解決できる企業を丹念に発掘したいと考えております。

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