アナリストの眼
ダイナミックな経営判断が目立つ米国企業
掲載日:2014年01月28日
- アナリスト
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投資調査室 井川 智洋
米国で頻発するM&A
2008年から米国を中心とした海外のヘルスケア産業(医薬品、医療機器など)を担当しており、ちょうど6年が経とうとしています。
6年間担当して改めて感じるのは、特に米国企業の場合、経営判断が非常にダイナミックであるということです。例えば、この6年間の5千億円以上の大型買収の件数をみると、グローバルで400件近くありましたが、その半分近くは米国企業が仕掛けたものです。米国のGDPの世界におけるシェアが2割程度であることを踏まえれば、米国企業がより活発に大型買収を行っている様子がうかがえます。
貪欲に株主価値最大化を追求する米国企業
ダイナミックな経営判断は、大型買収だけにとどまりません。私の担当するヘルスケア産業では、特にビッグファーマと呼ばれる巨大製薬企業で非中核事業を切り離す事例が目立ちました。
例えばファイザーは、栄養食品事業の売却や動物医薬品事業のスピンオフなど、2011年からの3年間で総額300億ドル以上に相当する事業を本体から切り離しています。メルクも動物医薬事業と店頭医薬品事業について、売却を含めて事業の見直しを検討することを最近発表しました。ほかにも、アボット・ラボラトリーズが製薬事業を切り離す一方、ブリストル・マイヤーズ スクイブが糖尿病合弁事業の売却を発表するなどしています。
「会社は株主のもの」という考えが根付いている米国では、経営者は常に株主の圧力にさらされており、こうしたダイナミックな経営判断は、もちろん株主価値向上を図るためのものです。上述のビッグファーマの例では、売却等で得られた資金の大半は株主還元に充てられています。
アナリストとしてはこうしたダイナミックな経営判断を事前に予測すべく、様々なシナリオを分析し、何が株主価値にとって最も好ましいかという自分なりの戦略をイメージしたうえで、経営陣とのディスカッションに臨んでいます。
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