アナリストの眼
「へぇ!」と思うこと
掲載日:2013年01月24日
- アナリスト
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投資調査室 峯嶋 利隆
1日1回、「へぇ!」、と感心する場面があったら素敵だ・・・。
これは新卒入社当時、同期生の一人が会社生活に期待することとして記した言葉です。年末に机を整理していたら引き出しの奥の方から、当時の自己紹介冊子が出てきました。18年もの月日を経て変色してしまったページを懐かしい気持ちでめくっていると、彼のこの言葉に再会したのです。私は、日頃から株式アナリストには情報収集力や分析力だけでなく、「へぇ!」と素直に感じられる感受性の豊かさも重要と考えていましたので、この言葉はじわっと心にしみました。
私はこの18年間一貫して有価証券運用業務に携わっており、株式アナリストとしても12年程度の経験があります。経験を積む中で、担当銘柄に関する知識や、投資判断に必要とされる洞察力や分析力についても相応の蓄積ができているものと思っています。
ただ、経験年数が長くなることで生じる「慣れ」の怖さも常に心に留めるようにしています。経験値がたまってくると、調査・分析活動の効率性は格段に高まります。例えば、新たな銘柄を調べるときには、「同業他社はああだったから、この会社はこうだろう」とか、新たな事象が生じた場合には、「過去の類似ケースではああだったから、今回はこうだろう」、というように自分の引き出しに蓄積されたものを探してくれば事足りてしまうことが多くなるからです。
ところが、他の市場参加者も同様に経験値をためていますので、こうしたパターン化された思考を繰り返してばかりいると、肝心の投資判断まで他の市場参加者と似通うことになりかねません。我々は、(他の市場参加者との)「認識ギャップ」を株式アクティブ運用の付加価値の源泉と考えていますので、こうした事態は避けねばなりません。
そこで感受性が重要になってきます。新しい情報や考え方に対して素直に「へぇ!」と感じること、ちょっとした変化に「あれっ?」と違和感を持つことです。経験値は時間の経過とともに上昇しますが、感受性はそれと反比例する形で低下しがちです。その感受性を瑞々しい状態に保っていれば、パターン化された思考を繰り返しがちな市場参加者が見落としていることに先回りして気付くことも増えるのではないでしょうか。
アナリストは仕事柄、多くの新鮮な情報を得る機会に恵まれています。アンテナの感度を高めれば、1日に何回も何十回も「へぇ」といえる場面があるはずです(もの忘れのせいで、「へぇ」の回数が増えるのは避けねばなりませんが・・・)。今後も、そんな「『へぇ』ボタン」(やや古臭い表現ですが)をたくさん押せる幸せを噛みしめながら、アナリスト活動を続けて行きたいと思います。
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