アナリストの眼

オリンピックとビールの話

掲載日:2012年08月15日

アナリスト

投資調査室 橋田 伸也

さあ、今年も第1四半期決算発表の時期が訪れるとともに暑い夏がやってまいりました。今年はロンドンオリンピックが開催され、ビールを片手に、夜遅くまでTV観戦をした方も多いのではないのでしょうか。

今年後半も続く異常気象

今回の開催地のロンドンはご存じのとおり霧と雨が多い街。
ロンドンオリンピック期間中の間だけは快晴の空の上で選手に競技をしてもらいたいと願ったものですが、6月のロンドンの天気はこの100年間で最も多い降水量を記録したとの事。常態化してきた異常気象には、関係者も頭を悩ませていた事でしょう。

今年はこの異常気象に年後半も悩まされそうです。
気象庁も7月データにおいて、今夏にエルニーニョになる可能性を示していますので、大きな影響を受ける企業も出てきそうです。アナリストの立場としては天候変化による業績変化やリスク対応力にも目を光らせる必要があります。

異常気象がビジネスに及ぼす影響

私の担当している商社業界でも天候要因はビジネスに大きな影響を与えます。
総合商社は、流通業者の立場として天候による需要変化に機敏に対応して調達量を変化させる必要がありますし、供給業者の立場では鉄鉱石や石炭で生産に影響が出ると収益に大きなインパクトを与えます。過去にも洪水の影響による生産停止で業績が大きく変化したケースがあります。

最近の総合商社の投資ではHardCommodity(鉄鉱石、石炭、銅など)の投資に続き、潤沢な事業投資額を使ってSoftCommodity投資(穀物など)を加速させていましたが、今年は特に穀物市況の価格変動が懸念されています。

ロシアや米国中西部など各地域で干ばつが広がっており、作付当初は作付面積増加による供給過剰予想であったのが一転し、天候不順による作柄悪化で品不足状態となっています。
大麦・小麦・トウモロコシ・大豆等などは直近価格が上昇していますが、穀物市場のマーケット規模は、小麦市場は300億ドル・トウモロコシ市場は500億ドルと、原油市場の1500億ドル・金市場の800億ドル・株式市場の60兆ドル(いずれも2011年の概算値)に比べ小さく、過剰流動性の状態においては価格乱高下リスクが高くなりそうです。
2次産業の取扱いに比べ1次産品での供給問題は消費行動に大きく影響を与えますので、下期以降の調達確保、食品価格への転嫁に関しても注意を払いたいところです。

オリンピックとビール

さて、話の最後はオリンピックとビールの話。
オリンピックの起源を遡ると、古代オリンピックは紀元前8世紀ころのギリシアにおける4つ祭典競技の一つであるオリュンピア祭が起源といわれており、麦の刈り入れが終わった後に行われたと言われています。その後一度は途絶えますが、19世紀のドイツでのオクトーバーフェスト(新しいビールの醸造シーズン幕開けを祝う祭り)のイベントで行われたスポーツ大会で、古代オリンピックのスタイルを取り入れたことが、1896年から始まる近代オリンピックの原型に繋がったと言い伝えられております。
歴史を振り返ると、オリンピックと、穀物と、ビールは大きな繋がりがあるのですね。

アナリストも同様に、調査企業の過去の経営取組の歴史を理解することは企業分析を行う上で大変重要です。まず企業を理解し、経営戦略を分析し、長期視点を持って投資実行を行う。大局観を持って投資を行えるよう今後も調査活動に尽力したいと考えています。

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