アナリストの眼
アナリストの眼と体で感じたスポーツ市場
掲載日:2011年09月22日
- アナリスト
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投資調査室 笹本 和彦
「アナリストやファンドマネジャーこそ肉体のシェイプアップが欠かせぬ職種。ヘルシーでなければ集中力を保てず、結果として冷静な分析・判断など出来はしない」これは英国長期出張時に知り合った某現地運用機関の株式ファンドマネジャーの言葉です。彼は時折ロンドン郊外の自宅から中心街のオフィスまで約20kmの道のりを走って通勤し私を驚かせていましたが、周囲には「趣味がトライアスロン」という若手のアナリストもいて、朝から晩まで分析に没頭することにある種の美学を感じていた私の方がグローバルな資産運用業界では少数派だと強く感じた覚えがあります。
彼らからの刺激とメタボへの危機感が起爆剤となり、私自身も今年に入りランニングを始めました。当初は週末に家の周りを軽く走る程度でしたが、今では平日も週一での夜の皇居1周が定例化する等、日増しに熱が高まっています。この取り組みの中で、まず驚かされたのはランニング人口の多さです。休日に自宅の周りを走っていると数分に一人はランナーとすれ違いますし、夜の皇居に至ってはピーク時には3500人が走っているとも言われるように、まさに肩が触れ合わんばかりです。あるスポーツ財団の調べによると、2010年の日本のジョギング・ランニング人口は推計で883万人、2006年(東京マラソン開催前)の605万人から大幅に上昇しているとのことです。
さて、こうした健康志向の流れは、世の中の経済活動にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。私自身の消費行動を振り返ってみても、今年に入り休日にスポーツショップに顔を出す頻度が激増している他、皇居ランニング時にはランナー向けシャワー施設の利用、同僚と走るのであればその後の飲食代等、無意識のうちにかなり出費が嵩んでおり、増え続けるランニング人口が同様の消費行動を取った場合にその経済効果たるやかなりのものではと推察されます。
スポーツ愛好家としての我々個人がイメージすることは困難ですが、スポーツを「市場」として捉えた場合、2010年で合計3.3兆円もの市場規模があり、その内訳はスタジアム観戦市場で6000億円、用品購入市場で1,2兆円、施設利用・会費市場で1.5兆円となっています。そのなかには例えばゴルフ、スキーのように景気変動や天候の影響を受けるもの、或いは上述のランニングに加え「山ガール」が話題の登山等、近年右肩上がりに伸びているものが混在しており、私たちがアナリストとして接触する小売り、サービス業界の企業も、トレンドを敏感に察知するなかで売り場の配置やサービス内容を柔軟に調整し、収益向上につなげております。
スポーツ市場の長期的展望を行う上での興味深いデータとして、いわゆる定期的に何らかの運動をおこなっているスポーツ人口比率は20代が37.7%, 40代が42.8%, 60代になると74.9%と年齢を追うごとに増加しており、スポーツ業界は来るべく人口高齢化社会に向けた成長産業と見ることもできます。私自身の経験として、こうしたスポーツに対する出費は何かしら爽快感があり、企業側としても消費者心理の巧みな分析を通じ、効果的な商品・サービスの設計と価格設定を行えば、今後大きく収益を伸ばすことは十分に可能と感じます。
私自身もランニングによるシェイプアップで、頭も体も引き締まってきました、こうした中長期のトレンドを的確に掴み収益を大きく伸ばせる「隠れた優良株」の発掘に全力で取り組みたいと思います。
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