アナリストの眼
日本とシンガポールに見る経済合理性の違い
掲載日:2011年08月23日
- アナリスト
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投資調査室 佐藤 啓吾
今年度から不動産・建設セクターの調査を担当させていただいております。昨年度までは、シンガポールにあるニッセイグループの海外拠点の一つでアジア株の調査・運用を担当していました。シンガポールに赴任し、まず気付かされたのが経済合理性を追求した国家であるという点です。シンガポールは東南アジアでも高層ビルが立ち並び、インフラも整備され美しい国という印象で、いまや一人当たりGDPは日本を追い抜き堅調な経済成長を続けています。
経済成長の背景には外資系企業誘致策、市場開放策の奏功が一般的には言及されていますが、実際に身をもって感じたのが結婚後も夫婦共働きで仕事を続ける方々が多いということ。日本の場合であれば、「寿退社」という言葉にも代表されるように女性は結婚後に家庭に入る方が多いように思います。女性労働力率が7、8割を超える国のある中で、日本については文化の違いによる生産性機会のロスがあるように感じました。また、シンガポールでは共働きといえども早めに仕事を終えて家族と一緒に夕食の時間を取るなど家庭も大切にしています。家事については家政婦の方を雇うなどして工夫をする文化があります。男女ともに継続して仕事に従事し、家政婦という労働市場では雇用を生み出す機会があり、国全体として一人ひとりが無理なく経済成長に資する合理性追求の文化がそこにあるように思いました。
国家の成長戦略という点でも無理なく合理性を追求できるシステム作りが重要ですが、企業経営についても同様です。企業価値評価においては資本効率を高め利益成長を見込めるかが重要なファクターとなりますが、一方でその成長の維持・安定性であるリスクファクター(不確実性)の分析も肝要になります。
日本株に加えてアジア株調査についても今後継続して担当いたしますが、このような各国の文化・特性や企業経営の安定性といった点に注目しつつ、「複眼思考」を兼ね備えたアナリストの眼で企業価値評価を行い、長期的な視点でお客様からお預かりした受託資産の価値向上に資する調査に尽力したいと思います。
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