アナリストの眼

ヘルスケアセクターにおける分析の視点

掲載日:2011年06月22日

アナリスト

投資調査室 井川 智洋

米国・欧州を中心とした海外のヘルスケアを担当しています。
この3月より、日本・アジア担当アナリストとの協業で、米国・欧州・アジアのヘルスケア企業をカバーするグローバルリサーチ体制を行っていますので、今回は当社のヘルスケアセクターにおける分析の視点についてご紹介させていただきます。

私が過去3年間担当していた米国のヘルスケアセクターについて簡単にご紹介すると、まずその多彩ぶりに驚かされます。ヘルスケアと聞くと、真っ先に医薬品・医療機器が頭に浮かびますが、米国のヘルスケアセクターを見ると、実に様々な業態によって構成されていることがわかります。医薬品や医療機器メーカーはもちろんですが、医療においても市場主義が進んだ米国においては、医療保険会社や病院なども営利企業として上場しており、また、医薬品企業と薬価の交渉を行う「医薬品給付管理会社(PBM)」という、日本人には耳慣れない企業も存在します。ほかにも、検査・診断を専業とする企業や最先端の手術用ロボットを製造している会社など、実に様々な業態が存在しています。

分析対象企業の業態が多岐にわたることは、アナリストにとって大変なように思えますが、当社の投資哲学に照らして考えると、実は大きなメリットともいえそうです。当社の投資哲学は、企業の経営戦略が企業業績にもたらす影響を分析することで超過収益を上げるというものですが、経営戦略を評価する上で競争環境の適切な把握は大前提となります。経営学者ポーターの「競争戦略論」を引用して述べると、特に競合他社の脅威、供給者の交渉力、顧客の交渉力については、景気環境などに応じてダイナミックに刻々と変化するものであり、アナリストとしては入念にフォローし、分析対象企業への影響を逐次評価しなければなりません。

本来、そうした競争環境の変化は、例えば、顧客側の企業が上場していないために取材を通じた情報収集ができない場合も多いのですが、米国のヘルスケアについては前述のとおり、実に様々な業態の企業が上場しており、それぞれが競合や供給者、あるいは顧客の関係であるために、取材等を通じて競争環境に関する情報を収集することが可能となります。その結果、例えば病院業界を分析する場合に、供給者である医療機器メーカーで何が起こっているかを調査した上で、医療機器メーカーの顧客である病院業界への影響とそれに対応する経営戦略を想像しながら、投資先候補となる病院とディスカッションを行い、最終的に業績予想を仕上げることになります。

米国・欧州・アジアの企業を同時にカバーするグローバルリサーチ体制は、ヘルスケア産業の競争環境をより正確に把握することで超過収益につなげようという取り組みのひとつです。ヘルスケア産業は、「ローカルかつグローバル」とよくいわれます。先述の米国の例のように、ある地域固有、つまりローカルの医療制度や競争環境の把握が求められる一方で、ヘルスケア企業は世界各国の企業と日常的に競合しており、グローバルな競争環境の把握が求められることになります。グローバルリサーチ体制によりこうした「ローカルかつグローバル」な分析が可能になると考えています。

こうした多面的な分析が継続的な超過収益獲得につながるよう、今後もリサーチ活動に取り組んで参りたいと思います。

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