アナリストの眼
中国人の消費意識
掲載日:2011年05月24日
- アナリスト
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投資調査室 舒 軼
私の担当は、台湾・中国の消費・通信業界です。先月、香港・深センへ出張した際、現地での調査活動から気付いた点を述べてみたいと思います。
中国政府の内需刺激策は消費にポジティブな影響を与えていることは日本にいても知ることのできる話ですが、現地に行ってみるとその消費パワーに驚きを覚えると共に、欧米や日本の消費者に見られる「自分自身に必要なものを買う」という価値観との差異を感じました。私はその背景として、中国人の消費行動は儒家文化の影響が大きいのではないかという点に注目しています。
儒家文化をベースとした中国社会では、集団の中での人との関わりを重視し、周りの人からどのように思われているか、ということを非常に意識して生活しているようです。その影響を受け、消費行動においてはどう見られているかを重視し、“面子”を保つことを大事にする傾向があるようです。決して裕福ではない人でも、何ヶ月間分の給料を貯めてデパートに行き、ブランド品を買う人が多くいます。そのような堅調な需要に支えられ、中国デパートで販売している商品は日本より高額なケースも少なくありません。
また、中国社会では儒家文化をベースに階級社会の存在を認めているようです。裕福な人は高いものを使い、自分の身分を強調する傾向があるように思います。典型例として中国の男性消費者は奢侈品の消費をけん引していますが、その理由は、女性より階級や地位を重視する傾向があるようです。中国社会では奢侈品は身分を象徴するものであり、決して浪費ではないと認識されています。ですから、家電量販店ではホームシアターが最上階にあり、ブランド別で並んでいますが、中心にあるのは一番高額なブランドです。
中国経済が発展すると共に、消費能力の高さは浪費の代名詞ではなく、努力のリターンと見られている中、中国人の高い消費意欲を理解することも難しくないと思います。企業はそうした消費者行動の分析に基づき、いかに効果的な戦略策定・実行を行うかに注力し、業績拡大を続けています。今回、現地に行き多くの企業の経営陣とのFace to Faceのコミュニケーションを通じて、改めて認識できました。
一国の消費市場のポテンシャルの分析を行う際、一般的には1人あたりGDPや可処分所得に着目します。但し、中国はこうした文化的な背景も考慮して分析を行わなければ、株価評価を見誤るリスクがあります。私は今後も現地にいって、生の情報を入手し、企業と密接したコンタクトを通じて、最大限に努力し、パフォーマンスの実現を目指してまいります。
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