アナリストの眼

世界人口シェア2%の国のグローバル化

掲載日:2010年04月19日

アナリスト

投資調査室 安達 浩

昨年中にNYでの勤務を終え日本に戻りました。小職自身は2度目の勤務でもあり大きな驚きはなかったのですが、今回は初の家族を伴った海外勤務ということもあり、家族の新鮮な目線を通じた発見がいくつかありました。

まず一歳の長男。赴任当初は、はじめて見る外国人に驚いていたようです。彼の人生の中で初めての経験だったからなのでしょう。世界の国の多くは多民族国家であり、複数の民族が一つの国家に属しています。例えばいろいろな国の人が、ひとつのマンションに暮らしていると想像してみれば、日本でいう近所付き合いとは大分違う考え方が生まれてくるとことが理解できると思います。趣味も嗜好も様々で、お互いに文化の違いがあることを尊重しあいコミュニティが成り立っている、世界にはそのような国の数の方が多いのだと思います。

また妻にも発見があったようです。平日に長男を公園に連れて行くと、ベビーシッターが子供と遊んでいる姿を多く見かけたようです。アメリカではベビーシッターが子育てを手伝うという考え方が定着しているようです。ベビーシッターを雇う人がこんなに多いとは、中間所得層が多い日本と比べて、実に幅広い所得層の方が一緒に暮らしているのだ改めて実感したようです。

日本に帰国後は日本企業の分析投資を実施していますが、気になるのは日本企業の“グローバル化”に対する考え方です。日本社会が成熟化に向かっているので、世界を意識するのは理解できますが、これまで日本経済を中心基盤として活動してきた企業が、日本独自の文化を認識しないまま“グローバル化”を図るのというのは危険な選択肢でもあるからです。企業戦略として日本市場が得意であるならば日本市場に力を入れるという選択肢も十分あってもいいと思います。

例えばあるTVメーカーが、成長ドライバーは海外だという戦略をとっていました。ただ「海外のどの市場で、目標ターゲットとする所得設定はどのレンジか?」と聞くと、まるで日本市場同様、海外には中間所得者層をターゲットとする巨大市場があり、日本製でよい製品を出せば売れるという認識のようでした。よい製品というのは主観的な判断であり、人種や所得によって全く違うというところからスタートしなければならない、という視点が欠けているように感じられました。

今後、世界人口シェアの2%弱である日本は、更に1%まで下がる観測です。日本で成功した企業も、海外展開を余儀なくされる時代が来ると考えます。しかし、海外市場を過大に恐れることも過大な期待を持つことなく、冷静に世界人口の2%の国とはちがう、98%の複雑多岐な市場に進出するのだという認識と前提の上で、自社の強みを生かせばきっと成功する企業も増えてくるでしょう。企業分析や企業対話にも自らの経験値を生かして、真に海外で成功できると思われる企業への投資支援を行っていければと思っています。

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