アナリストの眼
「平城京遷都1300年」と「坂の上の雲」
掲載日:2009年12月17日
- アナリスト
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投資調査室 中谷 幸司
2010年を目前に平城京遷都1300年で奈良への注目が集まっています。
1300年振りに再建され、ほぼ完成間際の大極殿は木造建築では、世界一の東大寺大仏殿に次ぐスケールでその威容には圧倒されます(総工費は200億円弱)。
一足前に開催された興福寺の国宝阿修羅展はすごい反響でした。東京国立博物館では1974年の「モナリザ展」以来の盛況だったようです。(東京国立博物館(3/32~6/7)で94万人、九州国立博物館(7/14~9/27)で71万人)
阿修羅像は、故夏目雅子さんに似ているという見方もありますが、光明皇后の母、橘三千代(たちばなのみちよ)の一周忌供養に造仏させたとのことで、モデルはこの光明皇后ご自身か或いは母ではないかという説があります。
阿修羅像は興福寺に帰山後も相当の人気のようで、11月まで続いていた興福寺での阿修羅展では待ち時間2時間と報道されていました。
(日本生命日比谷ビル大講堂では数年前まで興福寺主催の講話が定期的に開催されていました。)
さて、そんな盛り上がりを見せる奈良ですが、忘れてはいけないのは古都奈良と同じく世界遺産に指定されている斑鳩の法隆寺でしょう。世界屈指の木造古建築であり飛鳥時代の美を今に伝えてくれています。
ここで思い出すのが「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」という正岡子規の名句です。
この正岡子規と子規の親友にして日本海海戦で作戦参謀を務めた秋山真之を描いた司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」が、NHKで大河ドラマ(通常一話5-7千万円前後推定)の予算をはるかに超える規模で映像化され、今年から3年かけて年末に放映開始されます。
実は「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」という句は、斑鳩でなく、奈良の旅館(對山樓(たいざんろう))で柿を食べながら東大時の鐘を聞いて、着想したとのこと。(現在「天平倶楽部」になっていて「子規の庭」が保存されています。)
子規がこの句の構想を得た東大寺は、鐘楼も鐘も巨大ですが全体が実に壮大な伽藍です。 当時世界最高峰の技術を以てなぜ巨大な金銅大仏を造営したか、或いは平城京自体がなぜあれほど大々的な都市設計(25平方キロ、ちなみに千代田区は11.6平方キロ)であったかというと、その答えのひとつは日本の対アジア戦略にあったことは確かかと思われます。
当時世界最大の長安の都(90平方キロ)に対抗して、日本でもこれだけの都城を造成できるという国の形のデモであり、また、大仏建立は日本国内で採掘精錬された銅をはじめとする豊富な原料地金及び金・水銀など塗金必要な資源材と、鋳造技術、メッキ技術との融合という当時の日本のハイテク示威そのものでした。
他方、時代が下り、「坂の上の雲」に描かれる秋山兄弟、正岡子規やその周囲の人物像の姿はまさに日本の近代化に取り組む姿であり、そこには対欧米、つまり世界の中で小さすぎた日本の「危機感」、「志」、「理念」があったと思います。アジアの中での日本を捉えようとした奈良時代、世界の中での日本を捉えようとした明治時代には、今振り返っても迫力のある「危機感」、「志」、「理念」がありました。
小生は現在、セクターリサーチアナリストと連携して調査を突き詰め、経営陣との対話まで深彫りし、絞り込んだ銘柄選択で運用を行うファンドに携わっています。 企業の経営課題を明確に定義し、「危機感」を社内で共有し、「志」、「理念」を以て、戦略的に、合理的施策で経営され、サステナブルに中長期的な企業価値を高めておられる企業に対しては、対話を通じて積極的に応援していきたいと常日頃、取組んでおります。
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