アナリストの眼
適度経済成長への対応
掲載日:2009年08月18日
- アナリスト
-
投資調査室 清宮 啓嗣
「少子高齢化、人口減少」は、日本の将来に対しよく聞かれる言葉の1つでしょう。国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集(2008)から、日本の年齢別人口割合の実績及び予測推移を以下に示します。わずか1世紀の間に、人口構成が急激に変化する様子が見てとれます。
(%)
0~19歳 | 20~64歳 | 65歳~ | |
---|---|---|---|
1950年 | 45.7 | 49.4 | 5.0 |
2000年 | 20.5 | 62.1 | 17.4 |
2010年 | 17.7 | 59.1 | 23.1 |
2050年 | 12.1 | 48.3 | 39.5 |
総務省統計局の公表では、2005年10月1日現在人口推計で戦後初の人口減少に転じ、その後横ばいを経て、2008年10月1日現在人口推計で再び減少幅が拡大しました。いよいよ本格的な人口構造の転換局面を迎えそうです。
国力の推計には伝統的な軍事力や経済力、また、ジョセフ・ナイ氏が提唱するソフトパワーなど様々な要素があり、一概に「国力=人口」とは言えません。ただ、人口が一要素であることは確かだと思われ、その減少が経済成長の下押し圧力となる公算は大きいでしょう。いびつな人口構成が付加されるため、技術革新による生産性向上、労働参加率拡大による生産人口維持などから、楽観的に成長の持続可能性を描くことは少し難しいかもしれません。
昨秋の米国金融危機を発端とした不況で厳しい経済情勢が続いており、新興国経済の牽引などによる世界経済の早期回復が待たれます。一方で、国内に目を転じますと、人口減少などを要因として漸減していくと思われた内需が、不況を契機に急速に新たな均衡点に移った可能性が考えられます。今後、生活水準を低下させず持続的成長を達成するためには、技術革新や人的資本活用のあり方に加え、新たな局面に対応した税制や法律、市場や組織の整備が必要になるでしょう。
もっとも、日本企業にあっては、こうした構造変化に対する取組を意欲的に実施している例が良く見出されます。市場縮小を見越した設備廃棄など適正な資産配分、成長する外需獲得や新市場創造への挑戦などを見れば、将来の成長性や収益性拡大に向けて過度に悲観する必要はないでしょう。資本市場に係わる者として、こうした難局に立ち向かい打開する実行力ある企業を見極め、投資することができるよう心がけています。
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