アナリストの眼

不況期、アナリストの視点

掲載日:2009年06月30日

アナリスト

投資調査室 醒井 周太

金融危機に端を発する世界的な景気後退の中、私が担当します産業エレクトロニクス・電子部品セクターも、大きな影響を受けました。具体的には、製造業として過去最大の損失約7,000億円を計上した日立製作所をはじめとして、東芝、NECなど、日本を代表する名だたる企業が、1,000億円単位の赤字計上を余儀なくされた結果として株主資本が大幅に毀損されました。

しかしながら、同様に苦境にある欧州や米国の企業と異なり、これらの企業においては、正社員の雇用は、概ね守られているといえる状況にあります(一部、派遣従業員の件が問題化しました)。先の企業の中には、従業員が10万人規模の会社もあり、仮に人員削減などが行われた場合、一企業に留まらず、日本経済へ大きな影響のあるものとなるでしょう。具体的には、日本社会全体へ心理的な雇用不安をあおることに繋がり、それがさらなる消費低迷へと、典型的な負のスパイラルに入る可能性があり、それを考えると背筋の寒くなる思いを持ちます。

むしろ、積極的な意味合いでは、大企業が社会不安や消費低迷の急激な悪化を防いだという意味で、日本経済全体へ大きな貢献をしてきているのは事実だと思われます。

しかし一方で、このような日本企業のスタンスは、特に欧米の投資家からは、「非効率性」を温存させるものとして不評であります。行き過ぎると破綻した米国GMのようになるのではないか、との指摘を受けることもあります。

GMのケースは専門外ながら、新聞などによりますと、ハイブリッド車の開発など、将来に向けた投資が不十分であったと言われております。従業員を大切にしてきた面は同じであっても、効率性を重視し、将来に向けた備えが不十分であったようです。

産業エレクトロニクス・電子部品セクターの会社は、省エネやエコなどをキーワードとした将来分野へ従前より累々と開発を続けておりました。更には、機器装置、ソフトウェア(システム)、部材・部品などを総合的に取り扱う総合電機だからこその強みが発揮出来る環境が整いつつあるとも言えます。

アナリストとしては、表面的な損失額や景気の悪さに惑わされることなく、その背景で企業が何を考え、社員がどのような思いで、将来に向かって努力しているのか、そこを探ることが今後一層重要になってくるのだと思います。

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