ファンダメンタルズと⾦利から予想する
SOX指数の⾏⽅
運用企画部
松波 俊哉
概 要
- IT⼤⼿企業の設備投資はSOX指数と連動性が⾼い。今後も積極的な投資が期待されることは、ファンダメンタルズ⾯でのSOX指数の上昇要因に。
- 9⽉のFOMCでは、2023年内の残り1回の利上げを⽰唆。過去の利上げ局⾯では利上げ停⽌後に株価は上昇基調へ。
SOX指数の先⾏きをファンダメンタルズと⾦利から考察
SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)の先⾏きを占ううえで、(1)ファンダメンタルズ(売上⾼など企業の業績や、資産、負債などの財務状況)と、(2)⽶⾦利の動向が注⽬されるだろう。本稿ではファンダメンタルズ⾯の検証として、世界最⼤級の半導体ファウンドリーメーカー※1TSMC社(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)の売上⾼や、同社および、GAFAM※2の設備投資動向、加えて⾜元の半導体価格を踏まえた上でSOX指数の先⾏きを予想したい。また、⽶国⾦利の動向に敏感なSOX指数の特性を踏まえ、⽶⾦融政策とSOX指数の過去の関係を紐解き、先⾏きの指針としたい。
- ※1 半導体製造の「前⼯程」と呼ばれる前半の⼯程の作業を請け負い、顧客の設計データに基づいた受託⽣産をする業界。
- ※2 「G=Google」、「A=Amazon」、「F=Facebook(現Meta)」、「A=Apple」、「M=Microsoft」の5社の頭⽂字をとったもの。
TSMC社の売上⾼とSOX指数の連動性は⾼い
TSMC社の売上⾼とSOX指数は概ね連動性が⾼い傾向が⾒られる(図1)。ただし、2022年第2四半期〜第4四半期はこの限りではなく、売上⾼とSOX指数が逆相関となっている。この局⾯では、FRB(⽶連邦準備制度理事会)による利上げ幅が通常(0.25%)の2倍(0.5%)から3倍(0.75%)と、急ピッチであったため、⾦利の動向に敏感なSOX指数には逆⾵となり、同指数は下落した。しかし、⾜元のように⽶国の利上げが終盤に⼊る局⾯において、同社の売上⾼が底⼊れしていることは、今後のSOX指数のサポート要因となり得るだろう。
【図1:TSMC社の売上⾼とSOX指数は概ね連動、同社の売上⾼は底打ちか】
- ※上記は特定の銘柄を推奨するものではありません。
- データ期間︓2015年1⽉末〜2023年9⽉末(⽉次)
- 出所)ブルームバーグのデータ、TSMC社の資料をもとにニッセイアセットマネジメント作成
TSMC社・GAFAMの設備投資はSOX指数と連動性が⾼い
また、TSMC社の設備投資額とSOX指数も連動性が⾼い傾向がある。2023年の設備投資計画は昨年と⽐べるとやや⾒劣りするものの、それでもSOX指数の下落基調を⽰唆するほどの⽔準ではないとみている(図2)。
半導体の⼤⼝需要家であるGAFAM各社の設備投資も増加傾向にある(図3)。各社ともAI(⼈⼯知能)サーバーへの投資を拡⼤しており、今後も各社の積極的な投資が期待されることは、ファンダメンタルズ⾯からSOX指数をけん引する材料になると考える。
【図2:TSMC社の年間設備投資額とSOX指数は概ね連動】
- データ期間︓2014年〜2023年(年次)
- ※SOX指数は各年の年末値(2023年は2023年10⽉6⽇の値)
- ※2023年の設備投資額はTSMC社の予想値
【図3:IT⼤⼿各社は設備投資を拡⼤】
- データ期間︓2020年3⽉〜2023年6⽉(四半期)
- ※上記は特定の銘柄を推奨するものではありません。
- 出所)ブルームバーグのデータ、各社資料をもとにニッセイアセットマネジメント作成
過去の半導体価格の動向から今後のSOX指数の動向を読む
半導体価格を切り⼝にしてもSOX指数の底⼊れが近いと考えることができそうだ。
図はDRAM※3とNAND※4それぞれの価格とSOX指数の関係を⽰した(図4)。過去を⾒ると、半導体価格のボトムからピークまでの局⾯では(網掛けで⽰した部分)、概ねSOX指数が上昇する傾向があるのが⾒てとれるからだ。
- ※3 揮発性メモリの⼀種。⼀時的なデータの書き込み・読み出しなどを担う。
- ※4 電源がなくても記憶を保持できる不揮発性メモリの⼀種。データの書き込み速度が速く、⼤容量のデータストレージに適している。
【図4:半導体価格が底⼊れ、時間差はあるがSOX指数も底⼊れか︖】
- データ期間︓2013年3⽉1⽇〜2023年9⽉28⽇(⽇次)
- ※NAND価格はデータが取得可能な2018年7⽉23⽇から掲載
- 出所)ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
官⺠⼀体の産業構造改⾰が株価上昇の起爆剤となるか
また、官⺠⼀体の産業構造改⾰が⻑期的なSOX指数上昇の原動⼒になると⾒ている。⽶国においては、CHIPS法の成⽴が官⺠⼀体の産業構造改⾰に該当すると考えている。2022年8⽉に成⽴した同法は、半導体の設計、製造、研究開発のための国内設備、及び装置への投資に500億ドル以上(約7兆円)の補助⾦を⽀給するものだ。半導体メーカーは、イノベーションを起こすための強⼒なサポートを政府から受けられるのである。同法の成⽴を受け、TSMC社は⽶国に最先端の半導体⽣産⼯場の設置を発表した。
官⺠⼀体の産業⾰命の先例として、1995年以降の⽶国のIT(情報技術)⾰命として知られる、『情報スーパーハイウェイ構想』が挙げられるだろう。そこで、1994年当時の株価(S&P500種指数)と主なイベントを“道しるべ”として⽰した(図5)。これに2022年8⽉CHIPS法成⽴時の株価(SOX指数はサンプル数が少ないためここでは、ハイテク企業の⽐率が⾼いNASDAQ指数で代替)を100として指数化したグラフを重ねた。1994年以降、株価上昇の起爆剤となったのは、Windows95の発売である。今回、SOX指数上昇の起爆剤となるのは、⽶政府からの巨額の補助⾦を受け、官⺠⼀体で進⾏中の半導体やAI、EV(電気⾃動⾞)、⾃動運転に関するイノベーションであると⾒ている。
【図5:官⺠⼀体の産業構造改⾰打ち出し後の株価は上昇】
- データ期間︓1994年1⽉末〜2023年9⽉末(⽉次)
- 出所)ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
⽶⾦融政策とSOX指数
繰り返しになるがSOX指数は⾦利動向に敏感である。⾜元のような⾦利上昇局⾯では、軟調となる。図は1989年以降の利上げ局⾯で、最後の利上げ⽉の⽉末時点の⽶10年⾦利を100として指数化したものである(図6)。利上げ停⽌⽉を起点とすると、平均して利上げ停⽌⽉の2ヵ⽉前に⽶10年⾦利はピークアウトする傾向がある。仮に2023年内、11⽉もしくは12⽉が最後の利上げとなるならば、およそ10⽉頃が⾦利ピークアウトの該当⽉になると⽰唆される。過去の利上げ局⾯と⻑期⾦利の動向を鑑みれば、⾦利上昇局⾯の終わりもそう遠くはなく、SOX指数の底⼊れもさほど遠くないとの⾒⽴てができそうだ。
【図6:⽶利上げ停⽌前平均2ヵ⽉前に⽶10年⾦利はピークアウト】
- データ期間︓1989年2⽉末〜2019年12⽉末(⽉次)
- 出所)ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
⽶利上げ停⽌後、株価はどうなるか︖
9⽉のFOMC(⽶連邦公開市場委員会)では、2023年内の残り2回の会合のうち、1回の追加利上げが⽰唆されたが、利上げが最終局⾯にある可能性は⾼そうだ。図は、1989年以降の利上げ局⾯で、利上げが停⽌された⽉の株価(SOX指数はサンプル数が少ないためNASDAQ指数で代替)を100として指数化し、利上げ停⽌を起点に前後12ヵ⽉間の値動きを⽰したものである(図7)。2000年のITバブル崩壊を例外とすれば、利上げ停⽌後のNASDAQ指数は全て上昇基調を辿っている。今局⾯でITバブル崩壊のような⾦融危機が起きないとすれば、今回も利上げ停⽌以降の株価は上昇基調を辿るものと⾒ている。
【図7:⽶利上げ停⽌後のNASDAQ指数は1回の例外を除き上昇】
- ※過去の利上げ停⽌⽉の⽉末時点のNASDAQ指数を100として指数化
- データ期間︓1989年2⽉末〜2019年12⽉末(⽉次)
- 出所)ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
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