2023年~2024年のSOX指数の投資環境について

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戦略運用部
関 邦仁

概 要

  • 株価は景気に対して先行するのか?
  • 2023年の半導体市場は逆風が多く厳しいが・・・
  • シリコンサイクルから見る投資タイミング

株価は景気に対して先行するのか?

株式市場と向き合っていると常々相場は難しいと思う。その要因の一つは、“株価は景気に対して先行する”ということだ。これがなかなか難しい。例えば、個別株で見ても増益だからと言って買われるわけではなく、むしろ増益の伸び率が前回より小さくなれば、“今後更に悪化し、近い将来に減益に転じるのではないか?”との見方から売りの候補になる。逆に、2桁減益であってもそこが陰の極みと捉えられれば、その後の回復期待を受けて株価はボトムを形成し、上昇に転じるケースが多々ある。決算等の内容だけを見れば“増益だから良い決算なのでは?”と思ってしまうが、そうはいかないのが株式市場である。

なぜこのような話をしているかと言うと、2023年のフィラデルフィア半導体株指数(以下、SOX指数)の見通しでは、この “企業業績・ファンダメンタルズ”と“株式投資”を分けて考える必要がありそうだからだ。端的に言ってしまえば、2023年は半導体市場・関連企業の業績が悪い中、株価は上昇基調に転じる可能性が高いと考えているのである。

2023年の半導体市場は逆風が多く厳しいが・・・

まず、企業業績・ファンダメンタルズから見ていきたい。

SOX指数の予想EPS(一株当たり当期利益)は、世界の半導体売上高との連動性が極めて高い(図1)。そしてその世界の半導体売上高は、コロナ禍で特需的に発生したテレワークへの投資やPC・家電・ゲーム需要の高まりの一巡等があり、2021年7月に伸び率のピークを付けその後は軟化。世界的なインフレ高進や、中央銀行による金融引き締め策の効果、企業の在庫調整の動き等から、2022年9月には前年比マイナスに転じた。

【図1:世界半導体売上高とSOX指数の予想EPS】

グラフ
  • データ期間:2005年1月末~2023年1月末(月次)
  • 出所)ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

では2023年に関しては?と言うと、通年で約4年ぶりにマイナス成長になると予想されている(WSTS(世界半導体市場統計)は世界半導体市場の見通しを前年比4.1%減、米調査会社ガートナーは前年比3.6%減と予想)。要因は、世界経済見通しの悪化がスマートフォンやPC、家電の生産に悪影響を及ぼし、半導体メモリを中心に需要が低迷すると見られているためである。つまり、2023年の半導体市場は逆風が多く、厳しいということだ。

“ただし”である。これらの予想をより細かく見ると、“2023年の前半は消費者需要の減退が続くが、後半にかけてはモノがインターネットに繋がるIoT化の進展や、それに伴うデータセンター能力拡張の必要性、顧客の在庫調整一巡などがけん引役となり回復に向かう”との見方が多い。つまり、年前半と後半で成長の方向性は変わる可能性が高いと言える。

シリコンサイクルから見る投資タイミング

別の観点からも見てみたい。半導体市場には3~4年で好不況が周期的に訪れる「シリコンサイクル」というものがある。図2に日付を記載したが、世界の半導体売上高伸び率(前年比)のピーク及びボトムが約3~4年毎に訪れていることが分かると思う。今回の局面でもこのシリコンサイクルが効くのであれば、前回の伸び率がボトムを打った2019年6月から約4年後の23年半ばに伸び率は大底になる可能性があると言え、ボトムを打つ時期は既述の市場の予想と一致する。

【図2:世界の半導体売上高伸び率とSOX指数12ヵ月先予想EPSの推移】

グラフ
  • データ期間:2005年1月末~2022年12月末(月次)
  • 出所)ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • SOX指数12ヵ月先予想EPSは3ヵ月平均データを使用、日付は世界の半導体売上高伸び率のピークとボトムを示したものです。

実は株式投資をする際にはこの伸び率がボトムを打つ局面というのが極めて大事である。繰り返しになるが、例え前年比50%減が同30%減になろうが、減少している以上、厳しいマクロ環境であることは変わらない。ただし、“株価は景気に対して先行する”のである。

具体的に見ていきたい。図3には、世界の半導体売上高伸び率(前年比)とSOX指数を並べた。そして半導体売上高伸び率がマイナスになった時期に縦線をいれている。

過去の傾向から見れば、(1)半導体売上高がマイナスに転じてから1-3ヵ月程度で株価がボトムを打ち、(2)半導体売上高伸び率(前年比)がボトムを打ったタイミングで株価は本格的な上昇トレンドを形成、(3)伸び率がピークアウトして間もなくして株価が下落または横ばいに転じているように見受けられる。

これらに先ほど見たシリコンサイクルを踏まえて投資タイミングを考えれば、(1)のタイミングは2022年10-12月期頃に訪れており、(2)に関しては2023年半ば、(3)は早くても24年半ばということになろう。

中国に対する米国の半導体輸出規制や地政学リスクなどは、シリコンサイクルでは計れない事象で、時期が変化する可能性があるのは事実である。それでも、2022年に大きな調整を余儀なくされたSOX指数に対して強気になる時期にきているのではないだろうか。

【図3:世界の半導体売上高伸び率とSOX指数の推移】

グラフ
  • データ期間:2005年1月末~2022年12月末(月次)
  • 出所)ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • SOX指数:米ドルベース

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