金融市場ラインマーカー
円売り為替介入の効果について(為替需給の見地から)
2010年10月12日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
-
2011年6月以降のレポートはこちらから
- 今年7月までの為替需給バランス(※)は円高に傾いておらず、介入は、ある程度の円高抑制要因になる可能性。
9月15日の為替介入額は、2兆1,249億円で、一日の介入額としては過去最大となりました。過去の介入で1日、1兆円を越える円売り介入が実施されたのは今回を含めると11回しかなく、過去との比較で、今回の介入規模の大きさがうかがえます(グラフ1)。世界の投資家がリスク回避的になり、ヘッジファンド等の運用余力が低下する中で、1日、1兆円を越える巨額介入が断続的に実施された場合は、一定の円高抑制要因になるかもしれません。
過去の介入局面を見ると、貿易収支やサービス収支等から成る経常収支と、直接投資・証券投資等から成る資本収支の需給バランス(※)が円高圧力方向に傾いた時に、通貨当局は介入を行い、需給面での円高圧力を緩和していた構図が浮かび上がります。具体例を挙げると、年間介入額が過去最大規模の約15兆~20兆円に至った2003、2004年が良い例です。今年7月までは、経常収支と資本収支の需給バランスが、ほぼ均衡しており、需給面からの円高圧力は限定的に見えます。その中で、日銀が量的緩和に一歩踏み込んだことに加え、大規模介入を実施した場合は、ある程度の円高牽制になるものと考えます(グラフ2)。
- 一定期間に生じた対外取引の受取り(経常収支)と支払い(資本収支)の金額のバランスのこと。経常収支のうち、貿易黒字は輸出企業の円買いを通して、構造的な円高圧力に、一方、資本収支のうち、対外証券投資の活発化は円安圧力になってきた。主に、この二つの収支のバランスの偏重は、時に為替の方向性を決める重要な要因となってきた。
グラフ1

グラフ2

出所:財務省、ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成
金融市場ラインマーカー 関連記事
- 2020年11月10日号
- 【アナリストの眼】前提が変わる時代のアナリスト活動
- 2020年10月12日号
- 【アナリストの眼】企業の「パーパス」に対する期待と関心の高まり
- 2020年09月24日号
- 【アナリストの眼】自動車業界の環境対応と長期業績予想へのインテグレーション
- 2020年02月28日号
- POS小売指数による消費税増税後のマクロ消費予測
- 2020年02月17日号
- 【アナリストの眼】インバウンド消費が向かう先
「金融市場ラインマーカー」ご利用にあたっての留意点
当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。
【当資料に関する留意点】
- 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
- 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
- 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
- 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
- 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。