金融市場ラインマーカー

米国の出口戦略・金利上昇議論は時期尚早

2010年04月14日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場動向

  • 米国の利上げ議論は雇用環境の改善が見られるまで時期尚早と見る。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、現段階では金融引き締めを急いでいないと示唆されるコメントを表明しました。その背景としては、(1)住宅市場、特に商業不動産の低迷、(2)銀行貸し出しの低迷、(3)抑制的なインフレ、そうして特に(3)労働市場(高水準の失業率、新規雇用の減少、6ヶ月以上の長期失業者の増加)の懸念を挙げていました。その上で、「緩和的な金融政策に支えられて、来年にかけて失業率を低下させることが、もっとも妥当」とコメントしていました。このことは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で、「金利を長期に渡り、低位に維持する可能性がある」と述べたことと整合的です。FRB議長の懸念の中心が、雇用市場にある以上、利上げのタイミングは、同市場の改善後と考えられます。現状では、グラフ1の通り、平均失業期間は増加中であり、グラフ2の通り、新規雇用(求人数)は低迷しています。このため、利上げの議論は時期尚早と見られます。

グラフ1

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ2

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

米国金融当局は、量的緩和策などを通じ、金融市場に大量のお金を供給してきました。これは人為的にインフレを作る政策とも言えます。お金の大量供給を受け、民間銀行がFRBに預けなければならない預金の一定割合を超えた超過準備が急拡大しています。それにもかかわらず、米国の民間銀行はこの余剰資金を貸し出しに回しておらず、銀行貸し出しはむしろ落ち込んでいます(グラフ3参照)。せっかく供給されたお金が銀行内に滞留して、世間に還流しなければ本格的なインフレは起き得ず、デフレ的環境が続くことになり、ますます本格的利上げは遠くなります。4月7日に発表されたバーナンキFRB議長のコメントを受けて、市場の利上げ観測は後退しました。それを裏付けるように、同日に実施された米10年国債入札では応札倍率が3.72倍と約20年ぶりの高水準になり投資家の強い需要が確認されました(グラフ4参照)。

グラフ3

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ4

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ5

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

金利上昇のリスクとしては、各国の財政悪化状況に市場の注目が集まりやすい環境下での、国債増発懸念を含む上乗せ金利(リスクプレミアム)が米国債に要求される可能性があります。可能性としては低いものの、万一、景気が低迷する中での米国債長短スプレッドが急拡大(10年国債金利の上昇>2年国債金利の上昇)すれば、それは、良い金利上昇ではなく、景気に悪影響となるため、注意が必要です(グラフ5参照) 。このことを未然に防ぐために、FRBは金利を低位に落ち着かせることを意図したコメントを繰り返しているものと考えられます。

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