金融市場ラインマーカー

米国の公定歩合引き上げについて

2010年02月23日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

2011年6月以降のレポートはこちらから

金融市場動向

  • 公定歩合の引き上げは象徴的な意味しか持たず、本格的な金融引き締めへの政策転換を意味するものではない。

米連邦準備制度理事会(FRB)は2月18日に公定歩合を0.25%引き上げ、0.75%としました。しかし、この措置を持って本格的な金融引き締めへの転換と考える向きは少ない模様です。なぜなら、公定歩合金利が適用される、連邦銀行による民間金融機関への貸し出しは、もはや形骸化しており象徴的な意味合いしか持たないからです。本来、公定歩合金利は民間金融機関が信用リスクや流動性リスク等から資金調達に困窮した際の最後の借入手段に適用される金利のことです。FRBの同貸出残高は、リーマンショック(2008年8月)以降の金融緩和局面で急速に高まりました(グラフ1参照)。また、同期間の信用リスク・流動性リスクの高まりを受けて、FRBの貸出残高が急増しました(グラフ2参照)。ただ、金融危機の収束と共に、その残高は減少し、もはや制度そのものが形骸化し、象徴的な意味しかないというわけです(グラフ1、2参照)。だから、公定歩合の引き上げ=金融引き締め局面入りと考える向きが少ないのでしょう。実際、声明の中で、「この措置は、金融正常化を意図したもので、家計と企業にとっての金融条件の引き締めにつながるとは予想されない。」「経済状況が長期間に渡って、FFレート(政策金利)の異例の低水準を正当化する可能性が高い。」と述べています。このことは、FFレートの引き締めをはじめとする、資金吸収による本格的な利上げ局面に入ったのではないとのメッセージを市場に発信したのだろうと考えられます。

グラフ1

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ2

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

FRBは市場でインフレ期待が高まることを恐れ、これを未然に防ぐことを目的の一つとしてFFレート等の利上げを実施します。ただ、足元のインフレ期待は、さほど懸念されるような状態ではないこと、また、労働市場が低迷していること等から、本格的な利上げ局面を視野に入れる向きは少ない模様です(グラフ3参照)。今回の措置は量的緩和を含む非伝統的手段を解除する方向性に向けての小さな一歩であり、金融政策スタンスの変更を意味するものではないと考えてよさそうです。実際、量的緩和の象徴であるFRBの超過準備は依然として高水準にあります。

米国金融当局は、金融危機の収束に向けて、量的緩和策などを通じ、金融市場に大量のお金を供給してきました。これは人為的にインフレを作る政策とも言えます。だからお金の大量供給を受け、民間銀行がFRBに法的に預けなければならない預金の一定割合を超えた超過準備が急拡大しています。にもかかわらず、米国の民間銀行はこの余剰資金を貸し出しに回しておらず、銀行貸し出しはむしろ落ち込んでいます(グラフ4参照)。せっかく供給されたお金が銀行内に滞留して、世間に還流しなければ本格的なインフレは起き得ず、デフレ的環境が続くことになり、ますます本格的利上げは遠くなります。

グラフ3

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ4

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

金融市場ラインマーカー一覧へ

「金融市場ラインマーカー」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。