金融市場ラインマーカー

ユーロ圏のPIGS問題

2010年02月15日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場動向

  • 財政規律が懸念されるポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインの4カ国。アイルランドを加えた5カ国でPIIGSとされる場合もあります。
  • ギリシャ問題は、欧州連合の救済声明を受けて、債券市場を中心に一旦落ち着きを取り戻す展開に。
  • PIGSの財政規律懸念は、ギリシャはいざしらず、他国においては過剰反応との印象。政治主導のギリシャ救済は一定の評価。

2 /11に欧州連合(EU)首脳会合が開催され、声明ではギリシャ救済に向けて「断固とした行動をとる用意がある」と明確な政治的シグナルが発信されました。この評価を巡り、為替市場は「具体的な対応策がない」ことを理由に、後ろ向きな受け止め方をした一方、債券市場は「ギリシャを中心としたPIGS諸国の財政問題を放置せず、ユーロ圏全域への伝播を食い止める意思を示した」ことを評価し、前向きな受け止め方をした模様です。その証拠に安全資産である独10年国債とPIGS諸国10年国債の利回り格差は縮小しました(グラフ1参照)。為替市場ではユーロの上値は重くなっていますが、債券市場と比較すると、やや投機的な色彩が強くなっているようです。投機筋のユーロの売り越しポジションは、過去にユーロの買戻しが誘発された水準(-20000~-40000枚のユーロ売り越し)に到達しており、投機筋主導のユーロ安であれば、ポジション調整や収益確定のユーロの買戻しが起きても不思議ではない状況になっています(グラフ2参照)。

グラフ1

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ2

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

ユーロ圏では財政規律を維持するため、政府債務の対GDP比で60%以内、財政収支赤字の対GDP比を-3%以内が各国に義務付けられています。2009年の欧州委員会予想によると、ギリシャはこの二つの規律から大きく乖離した財政状態にあり、それが他の財政基盤が弱い、いわゆるPIGS諸国に飛び火しています。しかし、スペインは財政収支の対GDPは高水準ですが、政府債務の対GDP比は優等生であったり、イタリアは政府債務の対GDP比は高水準なものの、財政収支の対GDP比はユーロ圏平均以下で独に継ぐ好位置にあったり、ポルトガルは財政収支の対GDPは高いが、政府債務の対GDP比はユーロ圏平均以下で独並みであるなど、ギリシャのように両方の規律が傑出して悪い国と同列に論じる風潮はやや乱暴であると見る向きもあるようです。また、日米とPIGS諸国の数字上の比較をすると、むしろ日本や米国もギリシャ並み、PIGS諸国以上のリスクを抱えているようにも見えます(グラフ3、4参照)。

グラフ3

出所:欧州委員会とIMFの予想を基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ4

出所:欧州委員会とIMFの予想を基にニッセイアセットマネジメント作成

PIGS諸国の国債の利回り上昇の要因の一つは、同国債券がECB(欧州中央銀行)の定める「適格担保」の基準(グラフ5参照)を満たせなくなる可能性を市場が視野に入れたからです。通常、ユーロ圏の金融機関はECBが実施する資金供給オペに応じて資金借り入れを行う場合、適格担保資産をECBに差し入れる必要がありますが、国債が適格担保でなくなった場合、各国の銀行は資金調達に窮することになります。ギリシャは2011年の担保適格基準に照らすと、あと2段階格下げを受けるとアウトであるため、今回の救済宣言が必要だったのですが、他のPIGS諸国は5段階~7段階程度の余裕があります。ちなみに、2002年初頭に、デフォルト(債務不履行)となったアルゼンチン国債の格付けが約1年間に12段階も格下げを受けたことを考えれば、PIGS諸国の国債が、2011年までに適格担保要件から外れる可能性は皆無とはいいきれませんが、そもそも、先進国であるユーロ圏からは政治的にデフォルトが回避されると見るのが妥当であり、アルゼンチンの例と同列に論じるのは問題があり、PIGS諸国の国債が適格担保要件から外れる可能性としては低いものと考えられます(グラフ6参照)。

グラフ5

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ6

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

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