金融市場ラインマーカー

ギリシャ問題について

2010年02月04日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場動向

  • ギリシャのユーロ圏離脱やギリシャ国債の債務不履行はユーロ圏内部の政治的な力で回避されるものと考えられる。
  • ギリシャの経済規模や債務の規模を考慮すると、現状の為替市場は過剰反応しすぎの感がある。

12 月初旬に発表されたギリシャ国債の格下げ以降、同国を中心に財政基盤に不安を抱えるポルトガル、イタリア、スペインなどにも政府債務問題への懸念が波及しています。ユーロ圏では参加国の財政の健全性を維持するため、欧州安定・成長協定を遵守するよう各国に義務付けていますが、ギリシャやイタリアはこの基準のひとつ(政府債務残高の対GDP比が60%を下回ること)から大幅に乖離しています(グラフ1参照)。とはいえ、欧州の同規律を日本に当てはめると、イタリアやギリシャの比ではないほど財政基盤が脆弱であり、この点だけを見れば、ソブリンリスク(※)は日本の方が大きいと見る向きもあります。

  • ソブリン:国債、政府機関債など、中央政府により発行・保証された債券

ギリシャの経済規模はユーロ圏全体の約2%でしかありません。加えて、ECB(欧州中央銀行)の総資産額と比較しても、ギリシャの政府債務残高は金融危機を招く水準にはありません(グラフ2参照))。いざとなったら欧州当局の財政的支援で救済可能な規模と見られます。今後、事態収拾の目処が立つまでは、信用懸念はくすぶり続けますが、最終的には、欧州委員会はギリシャ政府による経済安定化計画の内容を精査し、進捗状況を監視した上で、必要ならば、財政的な支援も辞さないものと考えています。

グラフ1

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ2

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

ギリシャ問題を受けて、同国債券の利回りが急上昇し、その一方で、ユーロ圏内での安全資産の一つである独国債の利回りが低下し、独国債との利回り格差が拡大しています(グラフ3参照)。この動きは、投資家がリスクの高いギリシャ国債から安定的な独国債にマネーをシフトしているとの示唆につながります。為替市場ではギリシャ問題をユーロの下落要因と捉えています。このため、ユーロ/ドルはギリシャの格付けが引き下げられた12/8から約6%下落しています。ところが、債券市場の反応を見ると、前述のようにギリシャ国債から独国債への「ユーロ圏内での資金シフト」が観測されるのみで、グラフ4に見られるように独国債から米国債への資金シフトは観測できません。このことを見る限り、ギリシャ問題は世界的な金融危機に伝播せず、いずれユーロ圏内で収束されるとの投資家の見方を代弁しているのかもしれません。

グラフ3

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ4

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

ギリシャ国債の利回り急上昇に拍車をかけたのは、同債券がECBの定める「適格担保」の基準(グラフ5参照)を満たせなくなる可能性を市場が視野に入れたからです。通常、ユーロ圏の金融機関はECBが実施する資金供給オペに応じて資金借り入れを行う場合、適格担保資産をECBに差し入れる必要がありますが、ギリシャ国債が適格担保でなくなった場合、ギリシャの銀行は資金調達に窮することになります。またそうなった場合は、それこそ欧州発の金融危機が世界に伝播するリスクを高めます。これを未然に防ぐとの政治的観点から、ユーロの解体に発展しかねないギリシャのユーロ離脱やデフォルト等の行為を欧州委員会は許容しないものと考えます。ギリシャ問題は、厳しい改善策をギリシャ政府に策定させた上で、他のユーロ圏諸国等によっても救済措置が打たれるものと考えられます。

為替市場ではユーロの下落が喧伝されていますが、現在までのユーロ/円の動きを見る限り、その下落率は、ここ1年間程度の標準的な下落率の範囲内に留まっており、2007年の夏場から昨年の2月までに観測された世界的金融危機を受けた-32%にも及ぶパニック的な下落には遠く及びません。ギリシャ問題が全世界的な金融危機に発展するリスクがあると考える向きはどうやら少ないようです(グラフ6参照)。

グラフ5

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ6

出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

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